製薬の疫学専門家キャリアのデメリットについて

こんにちは、すきとほる疫学徒です。

さて、前回の「製薬の疫学専門家キャリアのメリット」に続いて、今回はデメリットについて綴っていきます。

とはいえ、私自身は特に現在のキャリアにデメリットを感じているわけではないので、「一般的にはこんなとこなのではなかろうか」と考えての記事となります。

前回の記事をまだご覧になっていない方は、ぜひそちらも合わせてどうぞ。

 

本ブログは、私が業務上知り得たいかなる情報にも基づかず、一般論もしくは広く公開された情報のみに基づき執筆されています
本ブログは、私個人の責任で執筆され、所属する組織の見解を代表する物ではありません

 

  

 


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お問合せ先:naoki.hirose@mmedici.co.jp(廣瀬個人アドレス)


 

 

 

 

 

製薬の疫学専門家キャリアのデリット

自身のリサーチクエスチョンを研究できない

最も大きいものが、これでしょう。

企業の社員として研究を行うわけですから、追求すべきリサーチクエスチョンは企業にとって重要なリサーチクエスチョンである必要があります。

「私はこの研究がやりたいから、会社のお金でやらせてください」なんて言っても、もちろん通用しないですよね。

 

これは疫学専門家に限った話でなく、サラリーマンであれば、追求すべきは企業の利益であり、会社というのは自分がやりたいことをやる場所ではなく、会社にとって必要なことをやる場所だということは十分ご理解頂けることだと思います。

 

しかし、私自身はこの点をあまりデメリットだとは感じておりません。

むしろ、「自分が普段興味を持つことのないリサーチクエスチョン、方法論にチャレンジできて、研究者としての幅を広げられるチャンス」と感じながら、仕事をしております。

 

とはいえ、私自身の元々の専門性は薬剤疫学とは違う分野の疫学でしたので、それらの研究ができなくなってしまうのは大変心残りでした。

そんな中で私が考えついたのが、アカデミアと製薬企業でのパラレルキャリアというキャリア形成です。

 

自己紹介にも書いた通り、私はいま、とある大学院にてポジションを頂戴しています。

ですので、自分のやりたいプライベートの研究がある際には、その大学院のaffiliationで行うようにしています。

 

また、外部の方と仕事関係なしに会う際にも(例えば他大学の先生とか)、企業にいるとどうしても「その企業の人」というフィルターを通してお付き合いすることになってしまうのかなと思っていました(私の気にしすぎかもしれませんが)。

そう言う際に、アカデミアでのポジションを持っておくことで、比較的フラットな関係構築がしやすいなと感じておりまして、そう言った意味でもアカデミアと企業のパラレルキャリアに居心地の良さを感じています。

 

また、私自身はずっと製薬企業の疫学専門家として働いていくつもりなので、そのつもりはありませんが、「いつかアカデミアに拠点を移したい」という方にとっても、インダストリーキャリアと並行してアカデミアキャリアを走らせておくのは、将来アカデミアへのソフトランディングを見据えると効果的な戦略ではないでしょうか?

  

 

 

朝早くや夜遅くに会議が入ることがある

これは製薬企業の疫学専門家というより、外資系企業全般にとってのデメリットかなと思います。

外資系企業、特にグローバルと密にコミュニケーションをとる企業では、朝早くや夜遅くの会議も珍しくないのではないでしょうか?

 

特に米国と会議をする際には、なかなかconfortableなtime zoneの重なりがないため、どうしても日本時間の朝早く(8時から9時くらい)か、日本時間の夜遅く(22時から23時くらい)の会議とならざるを得ないと思います。

 

しかしながら、私はこちらもあまりデメリットとは思っておりません。

会議があると言っても、毎日22時からというわけではなく、必要に応じてポイントポイントで話すだけですし、それに会議時間も30分程度もあれば殆どの状況では事足りると思います(会社にもよると思いますが、私が知る限りでは外資系の企業では長時間の会議は推奨されず、会議頻度や時間をミニマムにすることが推奨されます)。

 

また、製薬企業はワークライフバランスの向上、フレキシブルな働き方の推進に力を入れているところが多いと思うので、個々の社員が「昨日は夜遅くに働いたから、次の日は少し遅めに仕事を始めよう」という判断をしても、何の文句も言われません(むしろ、そうすることが推奨されるような雰囲気があると思います)。

 

ですので、仮にグローバルとの会議ためにポイントポイントで朝早く、夜遅くに会議が入ったとしても、その超過分は別日で吸収して休むことができますので、さほど負担にはなりません。

 

 

 

終わりに

「メリットばかり書くのもフェアじゃないよなぁ」という思いから、何とか無理くりデメリットを書き出してみたのですが、私の中でのメリット:デメリットのバランスとしては9:1くらいで、圧倒的にメリットの方が優っています。

 

仕事はスリリングですし、同僚は聡明で、それに自分・家族が生きていく上で十分な経済的・健康的環境を提供してもらっていると思っています。

すごく”ナイス”な方が多いんですよね。

 

外資系製薬企業のホームページを開いて、それぞれの会社の社訓みたいなものを参考にして頂けるとすぐお分かりになりますが、「人を尊重する」的なメッセージが殆どの企業で入っているかと思います。

 

例えば、外資製薬の売上世界ランキング上位の企業から、該当する箇所をいくつか紹介すると、

 

 

・ノバルティス

ノバルティス社ホームページ バリューより引用

 

・アストラゼネカ

アストラゼネカ社ホームページ Our Strategyより

 

・ファイザー

ファイザー社ホームページ Values & Behaviorsより

 

 

こんな感じですね。

これって、形骸的に入れているわけではもちろんなくて、恐らく社員の人事評価をする際の重要なポイントになっているかと思います。

ですので、こういったビヘイビアを兼ね備えている人間ではないと、昇進・昇給の機会に恵まれないということになりますので、比較的会社の中には働きやすい雰囲気が形成されているかと思います。

 

なんというか、「人が人として生きる喜び」を噛み締めながら働ける職場といいますか。

もちろん個々の製薬企業や、職位、ポジションによっても差はあると思いますが、例えばバッリバリの競争社会である外資金融なんかの働き方と比べると、外資製薬はかなり穏やかな心持ちで働ける環境になっていると思います(もちろん、外資金融の方はその辛さに応じた給与を提供されていると思うので、ウェルビーイングと給与のトレードオフなのでしょうか)。

 

 

本日の記事は少し短くなりましたが、最後までお読みくださりありがとうございました。

次回は、「製薬企業の疫学専門家になるにはどうしたら良いのか」というテーマで記事を綴っていきたいと思います。

日本には製薬企業の疫学専門家がとても少ないので(統計データがないので何とも言えませんが、各社1.5人だと仮定して、大手製薬のみ配置できているとすると、1.5*20 = 30人いれば良い方でしょうか)、「どうやってポジションをゲットしたか」とか、「どんなcapabilityが要求されるか」ってことがあまり紹介されてないんですよね。

 

ですので、私の分かる範囲で、他の製薬企業の疫学専門家の方も参考にしながら(もちろん個人情報に触れない範囲で)、お話しできたらと思います。

 

 

 

 

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