「博士号を取得して企業就活をしたけれど、面接ではあまり専門性について理解してもらえなかった」
「いざ研究者として企業に就職したはいいものの、自分の専門性が発揮できる仕事をさせてもらえない」
「研究者なのに、他の社員と同じくらいの給料しかもらえない」
『だから、企業は研究者を評価してないんだ』
こんな話、一度は聞いたことありませんか?
確かに、企業が自分の専門性を評価してくれないとついついネガティブな気持ちになってしまいますよね。
でも、ほんとうにそうなんでしょうか?
企業は資本主義に生きる組織、営利には何よりも敏感な生き物ですから、「自社のためになる」と判断すればアカデミアよりもずっと大きなアクションを、ずっとスピーディーにとれるはずなのです。
「わかってくれない?」の背後には、「研究者自身が自分という人間をどう活用するのか十分に伝えられていない」というコミュニケーションの課題があるのではないでしょうか?
研究者とは、プロフェッショナルです。
そして、プロフェッショナリズムとは自律性に立脚しており、「自身の専門性が十全に発揮される環境を作る」のもまたプロフェッショナルである研究者自身の責務のはずです。
であれば「企業に使われる」のではなく、「企業を使って研究者として自己実現する」という発想へとコペルニクス的転回を起こしてみませんか?
この記事では、企業就職について巷にあふれている誤解をとりあげて、「いやいやそうじゃないんだよ」と誤解を紐解いていくことで、読んでくださった方が「企業を使いこなしてやんよ」と前向きになるお手伝いをしたいと思っています。
ちなみに私自身は、企業研究者の就職では8戦全勝、そして就職してからは3年で年収1,500万円アップ、2回の昇進、毎年欠かさず成績優秀やボーナスを獲得、そして日本人では珍しく大手外資のグローバルで部下なし管理職として働いています。
日本人の企業研究者としてはトップレベルのスピードでキャリアを上げてきていると自惚れているのですが、その根底には「企業を使いこなしてやる」というコペ転思考と、企業研究者として勝つためのノウハウがあったからに他なりません。
全てを書き切るにはこの記事一本では足りませんので、こちらではそんなコペ転思考をそれぞれの誤解ごとにぶった斬っていこうと思います。
就活がうまくいかない、自分の専門性に価値はないんだ
ほんとうにそうでしょうか?
この思考にコペ転を起こしてみましょう。
「企業が自分を欲しがるように専門性を演出してやる、選ぶのはこちら側だ」
ちょっと言葉は悪いですが、企業にとって研究者とは(私もその一人であるように)人材という商品です。
企業目線からすれば、就活というのは目の前にずらーっと「私はこんなことできます」とPRしてくれる商品が並んで、「私はこの商品が欲しいわ、800万円までなら出すわ」というのが就活です(繰り返しますが、私自身も一商品です)。
さて、そうして自身の専門性を商品として捉えた時に、あなたは本当にその商品の魅力を伝えられていますか?
魅力を伝えるとは、ただ単に自身の研究テーマについて話すことではありません。
面接官のほとんどは門外漢でしょうから、淡々と研究テーマについて話されたって退屈で「ふーん、でそれうちどう役立つの?」状態になってしまうんですよ。
就活がうまくいかない時、それは専門性そのものに原因があるのではなく、マーケティングで敗北しているだけかもしれません。
マーケティングとは「モノが売れる状態を作り出すこと」です。
例えばですね、ジャパネットたかたを想像してみましょう。
ジャパネットたかたで紹介されている商品は、おそらくですが普通に店頭に並べられていても「すーん」とスルーして歩いていってしまうものでしょう。
しかし、一見するとそんな何の変哲もない商品があの番組で紹介されると、何百、何千と放送中に売れてしまうんです。
モノってのは、”質が高い”だけでは売れないんですよね。
- 質が高い
- その質の高さを訴求できるマーケティングができている
この2つが揃って初めて”モノが売れる”という状態ができあがります。
「じゃあどうやって専門性をマーケティングすれば良いんだ」という疑問は、”企業研究職として勝つためのノウハウ”で語りたいのでここでは深く書きません。
コペ転思考としては「自身の専門性を得るためのマーケティングがしっかりできていただろうか」という思考をスタートするところから始めてみましょう。
研究者なのに待遇が普通の社員の人と変わらない
ほんとうにそうでしょうか?
この思考にコペ転を起こしてみましょう。
「そもそも研究者は特別待遇されるべき存在なのか?」
研究者には、「必死の努力で専門性を積み上げてきた」という自負があります。
だからこそ「普通の社員と同じように扱われるのは納得がいかない」という物足りなさがあるんでしょう。
でもちょっと待ってください、研究者ってほんとうに特別なんでしょうか?
私も含めてですが、企業からすれば全ての社員は等しく社員です。
そこに待遇の差が生まれるのだとしたら、それは「企業の利益により貢献してくれる人間とそうではない人間」という区別により生まれます。
そうなんです、「研究者かどうか」は評価軸ではないんですよ。
そもそも、研究者だけが専門家ではありません。
たとえば人事、財務、プロジェクトマネージャー、それぞれの職にそれぞれの役割があり、高いプロフェッショナリズムをもって働いてらっしゃる方々は沢山います。
その中で、研究者だけを特別扱いする理屈が立つでしょうか?
ちょっと難しいですよね?
待遇向上を訴えるのであれば、「研究者だから」ではなく「これだけ会社に貢献したから」と具体的な数字で見えるエビデンスを手に、上司に訴えるべきです。
ですから、「”研究者なのに”待遇が普通の社員の人と変わらない」という思考にコペ転を起こしましょう。
「研究者も一社員、会社への貢献で高待遇を勝ち取る」と考えるのです。
「じゃあどうやって会社への貢献を果たすの?」というノウハウはまた別のところで語りたいと思います。
研究者なのに専門性が発揮できる仕事をさせてもらえない
ほんとうにそうでしょうか?
この思考にコペ転を起こしてみましょう。
「仕事は与えられるものではなく、自ら作るもの」
まず大前提として、企業で行う研究とは企業のお金で行われるものですから、「やりたいことなんてできなくて当たり前」という発想にシフトしましょう。
「だから諦めろ」ということが言いたいのではありません。
その前提からスタートし、
- まずはやるべきことで100点を出し続ける
- そして、仕事を与えられるのではなく、仕事を作る立場になる
- その上で、やるべきこととやりたいことが重なる仕事を作り、自己実現する
このようなステップで企業研究職として専門性を発揮できる仕事を手にしていけば良いのです。
「企業研究職は、自分のやりたい仕事ができない」という愚痴は、まず間違いなくステップ1までしか見えていない方々から出てくる愚痴です。
まずは仕事を作る立場になりましょう。結果を出し、それを上司に、そして上司の上司に認知させ、そして昇進を勝ち取り、その上でプロジェクトを発案するのです。
「じゃあどうすれば」という話はまた別のところで。
終わりに
いかがでしたか?
わたしは企業研究者という仕事が大好きです。
正直なところ、最初は「アカデミアは厳しいから企業にいこう…」というネガティブな理由と「お金めっちゃ欲しいから企業に行こう」という邪神100%な理由での企業就職だったのですが(親を支える必要があったので)、今ではこの選択をとったことが正解だと心底思っています。
企業という超大規模なリソースを使って「やるべき x やりたい」が重なる研究を行い、海外の一流の研究者と協働でき、そして家族を支えるだけの十分な給与と福利厚生を得られる環境。
でも、世間では企業研究者に対してやっぱり誤解がある。
「企業はアカデミアに残らなかった研究者がいくところ」
違うのです!
企業研究者には企業研究者の勝ち方が、楽しみ方があるのです!
そんな方法をお伝えしたい。
私は人よりもちょっぴり企業研究者として結果を出しているから。
3年間で年収1,500万円アップさせ、グローバルで部下なしとはいえど管理職をしている企業研究者は日本にはそう多くないと思っています。
だからこそ、このブログでは企業研究者として自己実現を果たし、研究の自由も、経済の自由も手にしていくための方法をお伝えしていきたいと思いますので、ぜひぜひ遊びにきてくださいね。
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