こんにちは、すきとほる疫学徒です。
本日は、「これから研究を始める」、「いま初めての論文を書いている」という学生がまず最初にやっておくべきことを紹介します。
「私が最初からこれをやっていれば、研究の効率も、クオリティも全然違ったのに」と思うものだけを取り上げてみました。
電子ジャーナルの外部アクセス権申請
これは大学によっては用意されていないかもしれません。
図書館のパソコンからアクセスしなければならない電子ジャーナルを、大学のVPNを介することによって、自宅のパソコンからもアクセスできるようにするサービスです。
研究において、「見たい論文がアクセス権の問題で見られない」というのは非常にストレスが大きく、研究効率を大幅に低下させます。
私も外部アクセス権が提供されるまでは、
- 見たい論文を自宅でピックアップ
- PubMed IDをメモしておく
- その次に大学に行ったときにまとめてダウンロード
ということをしていました。
でも、論文って「読みたい!」ってときに読むから楽しく読めるものであって、ちょっと時間をおくと”運命の出会い感”がなくなってしまうので、PubMed IDをメモしたけど結局読まずじまいになってしまった、なんてことも結構ありました。
Revise期限が迫っている時も、わざわざ電車に乗って大学に行かないと必要な論文にアクセスできず、本当にストレスでしたね。
電子ジャーナルのアクセス申請、というかVPN申請は、ちょっと小難しい手続きを経ないと付与されないのですが(大学ごとに手続きは違うと思いますが、セキュリティの観点からどの大学もそれなりに手間のかかる手続きを要するはずです)、これは研究を始めたその日に最優先でやった方が良いと思います。
iPadの購入
研究を始めると、膨大な数の論文を読む必要に迫られます。
そんな時、論文ビューツールとしてiPadがお勧めです。
iPad miniは論文ビューに最適なサイズ感であり、電車に乗りながら、布団に転がりながら、お風呂に入りながらと、日常生活の至るところで違和感なく論文を読み進めることができます。
もちろん、パソコンに座って「いざっ!」という気持ちで論文を読むのも悪くないと思うのですが、個人的には「生活の中に自然と研究を落とし込む」という意味では、私はiPad miniで論文を読む方が好きです。
iPad miniを買ったおかげで、閲覧する論文の数が圧倒的に増えました。
それに、Apple pencileで直接論文に書き込みを行えるというのが、思考の効率化に一躍買ってくれています。
論文を読んでいると、それはまぁ論文内のあちこちで「これはどうして?」、「この記載感良いな」、「この引用文献はチェックしておこう」みたいな脳内コメントが湧いてくるのですが、パソコンのメモ機能だとどうも入力が面倒になってしまうんですよね。
次に論文を開いた時も、パソコンで入力されたメモって読み飛ばしてしまうこともありますし(メモをオンにしないと中身が見れないことがあるので)。
でも、Apple pencileなら思いおもいのメモを論文本体に書き込むことができますので、非常に自由度が高く、また次に論文を開いた時も確実にメモが目に入ります。
文献管理ツールのダウンロード
先ほどもお伝えしましたが、研究をする上では膨大な数の論文に触れることになりますが、間違ってもダウンロード、パソコンのフォルダで管理などをしてはいけません。
どこに何があるか分からなくなり、一度ダウンロードしたら、二度と開けなくなること間違いなしです。
そんな時は、文献管理ツールを使いましょう。
文献を管理するためのツールは幾つかあります。
Mendeley, Paperpile, Endnote, Zoteroなどですね。
中でも私が個人的に気に入っているのは、Paperpileです。
有名どころとしてはMendeley, Paperpile, Endnoteが上がりますが、
- Endnoteは高い(学生版で19,800円)
- MendeleyはiPadアプリがない
という理由から、私はPaperpileを使っています。
ちなみにPaperpileは毎月2.99ドルです。
Mendeleyは無料かつiPadでも使えたので、私は当初Mendeleyユーザーだったのですが、なぜか突如iPadでのサポートが打ち切られてしまったため、もう使っていません。
ちなみに、こういった文献管理ツールはWordのプラグインをサポートしており、Wordで執筆した論文に、直接引用文献を入れこめるようになっています。
ボタン一つで引用スタイルや、文献番号などを変えてくれるため、論文を書くなら絶対に使った方が良いです。
学内のアカデミックライティングサービスを活用する
論文の書き方にはお作法があります。
どんな表現を使うべきか、
どこに何を書くべきか、
どれだけの文量をかけるべきか、
などですね。
なので、”自己流”は通用しません。
そうしたお作法を守れていなければ、論文の内容を見てもらう以前に「質が低い」と判断されてしまうリスクがあります。
所属した研究室で赤デミックライティングを教えてくれれば良いのですが、残念ながら全ての研究室がそこまで質の高い教育を提供しているわけではないと思います。
そんな時は、学内のアカデミックライティングサービスを活用しましょう。
それなりの規模の大学であれば、無料で相談できるアカデミックライティングセンターがあるはずです。
また大きめの大学なら、年間を通してアカデミックライティングの講義が提供されているところもあります。
アカデミックライティングを知らずに論文を書くと、「構成や文法がごちゃごちゃで、一からアカデミックライティングを勉強して書き直し」と、二度手間になってしまいかねませんので、しっかり勉強した上で研究を始めましょう。
バイブルとなる論文の書き方本を1冊見つける
先ほど、アカデミックライティングの重要性を強調したばかりですが、残念ながら一度アカデミックライティングの講義を受けてスラスラ論文を書けるようになれば、誰も苦労しません。
何年も、何本もの論文を通して、「こうやって書くと、論文を魅力的にすることができるのか」というノウハウを身につけていくことになると思います。
ですので、心の拠り所としていつでも参考にできるような、論文の書き方のバイブル本を用意しておきましょう。
医学分野に限っても、とても多くの論文書き方本が巷に溢れていますが、私のおすすめはこちらです。
毎年、数十本もの論文を世に出し続けている東京大学の康永秀生教授による一冊。
論文のそれぞれのセクションで、何をどう書くべきかというエッセンスがぎゅっと詰め込まれており、たった180ページちょっとで大きな感動を与えてくれます。
私がこの本を読んだのはもう5年も前ですが、今でも年に1回はこの本を開き、初心に帰るようにしています。開くたびに、「そうだったそうだった、気をつけないと」と学びを得られている、素晴らしき一冊です。
学内外の奨学金・研究助成金を片っ端から調べる
人によっては研究費を必要とするタイプの研究を行う学生さんもいらっしゃるでしょう。
例えば、物品購入費であったり、研究参加者への謝金であったり、学会参加費であったりです。
それに、英語で論文を書いている場合には、ほぼ確実に英文校正費が発生すると思いますし、投稿先のJournalによっては掲載費かかります。
潤沢な予算を有する研究室であれば、それら全てを研究室が支出してくれる可能性もありますが、そうでなければ全て学生の持ち出しとなります。
研究自体にお金がかからなかったとしても、英文校正費でだいたい8万前後、そしてOpen accessのjournalに掲載となった場合には5万〜30万程度の掲載費がかかることになりますので、これが手出しとなると、学生さんの生活を脅かしかねない痛手となるでしょう。
ですので、(そんなん余裕で払えるぜハハーンという学生を除いて)必ず研究助成金を活用しましょう。
研究助成金は、1年のうちで申請できる期間が決まっているため、「いざ研究を始めるぞ!」と思った時期にはもうとっくに締切を過ぎていたということも十分あり得ます。
そのため、まだ具体的な研究テーマが決まっていない人であっても、学内外の研究助成金を確認しておき、「いつ、何を提出すべきか」ということを明確にしておきましょう。
その上で、そこから逆算する形で研究の準備を進めていくのです。
普通の大学であれば、事務局に行けば学生が応募できる助成金リストをファイルしてくれているはずですので、まずは事務局に連絡し、閲覧させてもらうのが良いでしょう。
(資金に余裕があれば)研究ガジェットを揃える
学生さんでしたら、基本的に大学で研究を行うことになるでしょう。
ですので自宅用の研究ガジェットへの投資は、経済的に余裕がある方のみ行えば良いと思います。
ただ、もし自宅でもそれなりに研究(というか論文執筆)をするという学生さんは、生活に支障が出ない範囲で研究ガジェットを揃えることをお勧めします。
マウス一つとっても、ハイテクマウスと格安のちゃっちいマウスとでは、論文執筆の効率が驚くほど変わります。
できればハイテクマウス、曲面ワイドモニター、高くて快適な椅子、エルゴノミクスキーボードあたりはマストで揃えたいところです。
お勧めの研究ガジェットはこちらで紹介しておりますので、ぜひご覧くださいませ。
研究職キャリアの新たなカタチとして、企業とアカデミアのパラレルワークについて解説したオールインワンのnote記事を執筆しました。
私自身がこのキャリアを数年間実践していますが、双方のキャリアの弱みを補完し、さらに研究者として活躍の場を広げられる革新的なキャリアスタイルだと感じています!
実際の外資企業と国立大学で研究職としてパラレルワークを行う私の目線からこんなことが解説されているので、ぜひご覧ください。
- 企業・大学それぞれでの研究者としての仕事内容
- パラレルワークの魅力
- パラレルワークのためのポジションの取り方のコツ
- パラレルワークのワークライフバランス
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