こんにちは、すきとほるです。
本日は、外資系企業と大学にて研究者として働く私が、「全ての研究者、大学院生が読むべき!」と猛烈に感動した研究お役立ち本を紹介したいと思います。
なお、2022年版の「私の研究環境を劇的に改善したベストバイ」も紹介しておりますので、本記事と合わせてお楽しみください。
英語論文の書き方
日本人研究者のための 論文の書き方・アクセプト術
● 500ページという圧倒的分量で、痒いところに手が届きまくり
● まさに”All in One”、「これ一冊あれば事足りる」
「ネイティブが教える」シリーズとして日本中で人気を博する書籍のシリーズ第一作目。
東大生協でも第一作と第三作が同時にランクインするという強者っぷりを披露。
書き方・アクセプト術という名の通り、ただ単に文法として正しい英語を教えるだけではなく、どのように論文を展開していけば、科学論文としてのバリューを向上させられるかという戦略にまで足を踏み込んだ一冊。
500ページという圧倒的ボリュームからなる本書は、まさに「これさえやっときゃ大丈夫」な一冊となることでしょう。
デスクの一番近くに置いて、この本と共に何本もの論文を書き上げながら、論文の書き方を身につけていく。
そんな長い目でお付き合いができる名著だと思います。
英語論文の書き方本の歴史は、「ネイティブが教える」シリーズの前と後で分かれる、そう言っても過言ではないほどのクオリティの高さです。
ちなみに、同じく人気を博しているシリーズ第二作、三作はこちら。
どちらも第一作に引けを取らない完成度ですので、ことごとく手元に置くことをオススメいたします。
必ずアクセプトされる 医学英語論文
● 「初めて英語論文を書く人」でも楽しめる、超シンプルかつ分かりやすい解説
こちらは医学論文にフォーカスした一冊ですが、日本の若手の医学研究者でこの本のお世話になっていない人間はいないだろうと言い切っても許されるほどの人気本です。
著者の康永先生は東京大学医系科学研究科の教授であり、驚くことに500本以上の英語論文を国際誌に出版しています。
そんな本書、畏れ多いことに、康永教授が500本もの英語論文を書く中で掴み取った「これだ」というエセンスを凝縮し、そしてさらに凝縮し、なんとたった190ページという短さにまとめております。
ただ短いだけじゃなく、とにもかくにも分かりやすい。
初心者には壁が高く感じられるはずの英語論文も、本書を読めば「え、なんか私でもイケるんじゃね?」と思わせてしまうほどの分かりやすさです。
私自身も修士の学生時代には2年間で6本の英語論文を執筆していますが、最初から最後までただひらすら愚直に康永教授がこの本に込めた教えを実行し続けました。
独り立ちした研究者として働く今でも、私の医学論文執筆のオリジンは、この本です。
というわけで、とにかく初心者にはこの一冊。
英語論文を描き始める前にこの一冊を読み、英語論文の全体の構造、そしてそれぞれのパートで何を書くべきかということを理解することをオススメします。
プレゼンテーション
秒で伝わるパワポ術
● 書いてあるノウハウはどれもその場で実装できるけど、パワポが一気に美麗になる
研究者といえばプレゼン。
学会に、授業に、ゼミ発表に、奨学金に、助成金に、と。
私自身も、1週間に1回以上は必ずプレゼンをしているような気がします。
ただ論文を書くだけで評価されるなんていうのは本当に一握りの人材で、そこからポジションや研究資金の獲得につなげていくためには、「書いた論文をどれだけ魅力的にプレゼンするか」というスキルが必要不可欠でしょう。
研究者というと、寡黙で独りでいることが好きな人間として映画や小説では描かれがちですが、実際はスター研究者と呼ばれるような方は、しゃべりも上手な方が多いですよね。
その背景には、研究者として活躍するためには上記のような場でプレゼンをし、チャンスを掴み続けるしかなかったという事情があるのかもしれません。
この一冊は、プレゼンに欠かせないパワーポイントの作成スキルを驚くほど上昇させてくれます。
著者は「くだらないけど、ためになる」をモットーにするパワポ芸人、トヨマネさん。
昔話をネタにしたパワポスライドの作成法は、シンプルだけどため息が出るほど美しいです。
私自身も、「そうだ、パワポ力を磨けば、プレゼンがもっと魅力的になるんじゃない?」と思いってこの本を購入しましたが、この本を読む前と後で自分のパワポを見比べてみると、あまりの完成度の違いに自分で驚いてしまいます。
「わたしがこんなに綺麗なパワポを作れるようになるなんて」と、ニヤニヤしていましたね。
カーネギー話し方入門
いくらパワポを美しく作ろうと、肝心の話術がガタガタでしたら全てが台無しです。
パワポはあくまでも自分のプレゼンを聴衆に聞かせるための補助、本命はトークですよね。
私が何冊もトーク力に関する本を読んできた中で、最も分かりやすく、そして最も実践に繋がったのがこの一冊です。
歴史的ベストセラーである「人を動かす」、「道は開ける」を生み出してきたカーネギー。
その三部作のスピーチ編にあたるのが本作です。
カーネギー本は、カーネギーの物語を通してノウハウを教えてくれるので、よくあるビジネス本のような堅苦しさがなくて好きなんですよね。
まるで小説を読んでいる気分になります。
この本を読んでいるだけで「あれ、なんか私もジョブスみたいなプレゼンができる気がしてきたぞ!」と不思議と思わせてくれる一冊です。
ちなみにカーネギー三部作の残り二作はこちら。
思考法
思考の整理学
● それでいて、今すぐ実践できるようなシンプルなテクニックを紹介
1986年に発売されて以来、思考法に関する本の中で不動のナンバーワンの座を押さえ続けた一冊。
この10年間に東大・京大で最も読まれた本らしい。
大学の生協文庫年間ランキングでも2018-2020年と3年連続の1位を獲得。
「頭の使い方を学びたい」というときに、この本を差し置いて紹介すべき本は存在しないでしょう。
チャプター名は、「カクテル」、「発酵」、「触媒」などと、世に溢れるチープな思考法の本とは一線を画した滋味の効いた命名。
それとともに、「カード・ノート」、「メタ・ノート」など、今すぐ実践でき、何十年も自分の武器になってくれるようなテクニックの紹介も忘れません。
私自身、本書に出会ったのが大学の学部時代ですが、それから10年の時を経てもいまだに本棚から引っ張り出し、目を通します。
本書が発売されて35年以上、時の洗練を受けていっそう輝く本書を思考本と呼ばずして、いったい何を思考本と呼べばいのでしょう。
武器としての決断思考
● ただのノウハウ本ではない、著者の血肉で書かれた文字が、読者の心を燃やす
東大からマッキンゼー、そしてエンジェル投資家の傍ら東京大学・京都大学でディベートを教え、迷える若者たちの道標であり続けた瀧本哲史氏。
残念ながら、47歳という若さでご逝去されてしまった。
そんな瀧本氏の「武器としての教養」シリーズはあまりに有名であり、私が紹介するまでもないと思います。
本書はディベートのノウハウを基礎にし、答えのないカオスの時代を生きていく中で、どのように意思決定を行うべきかという、決断力を鍛えるための一冊です。
決断とは人生において何かを選び取る行為、そう考えれば、本書はより良い人生を形作るための方法を説いた一冊と言っても過言はないでしょう。
瀧本氏の書籍は、どれも熱いんですよね。
瀧本氏の経歴を見れば誰でも分かる通り、氏はロジカルシンキングを極め尽くした人物であることは疑いの余地がありません。
しかしながら、瀧本氏の文章には血が流れています。
「武器としての」というタイトルからも分かる通り、本書は読者に武器を授けるために書かれています。
カオスな時代を、強く、胸を張って生き抜くための武器です。
その武器の一つが、決断思考。
瀧本氏がご逝去された今、もはや氏の肉声を直接耳にする機会は失われました。
しかしながら、こうして瀧本氏の思考が書籍という媒体になり、その革命の灯火にいまでも触れることができることに、感謝がつきません。
「武器としての教養」シリーズはこちら。
メンタルケア
嫌われる勇気
大学院生、そしてアカデミアの研究者に何よりも必要なもの、それはメンタルタフネスとメンタルコントロールのノウハウですね。
私自身も、企業の研究者として仕事をする今よりも、大学院に在籍していた時の方がよっぽどメンタルが辛かったです。
学部の同期が企業人となり華々しく活躍する一方で社会に対する生産性を持たぬことの劣等感、
書く文章、提案する研究テーマはことごとく赤字で塗りたくられ、
周囲の同期・先輩は涼やかに業績を上げていく。
人生で、もっとも自分の無能さを痛感した時間でした。
そんなときに友人から紹介してもらったのがこの一冊。
正直、こういう本には怪しさを感じていたので過去に手に取ることはなかったのですが、本書を読み、そのような疑念は雲散霧消しました。
自分自身のことを「行為」で評価するのではなく、そもそもの「存在」として受け入れること、
「誰の課題か」、「その選択による結末を最終的に引き受けるのは誰か」として課題を分離すること、
悩みを対人関係の中で捉えること、
そうしたノウハウが、本書では哲人と青年の対話として描かれます。
そして、それらの対話の根元にはアドラー心理学の理論があります。
単なるノウハウ本でなく、人生の見方を変えてくれるような一冊。
続編としてはこちらがありますので、「嫌われる勇気」が気に入った方はぜひ手に取ってみると良いでしょう。
三体
● 胸躍るSFの高揚感と共に、科学者であることの誇りを取り戻させてくれる一冊
世界中で大ヒットした中国生まれのSF「三体」。
あちこちの本屋で平積みになっているため、この表紙を見かけたことがある方も多いでしょう。
ただいま、ネットフリックスでドラマ版も絶賛作成中です。
その書評には、なんとオバマ前大統領やジェームズ・キャメロンも名を連ねるほどの力の入れよう。
アマゾンの商品説明をちょっぴり拝借しましょう。
物理学者の父を文化大革命で惨殺され、人類に絶望した中国人エリート科学者・葉文潔(イエ・ウェンジエ)。失意の日々を過ごす彼女は、ある日、巨大パラボラアンテナを備える謎めいた軍事基地にスカウトされる。そこでは、人類の運命を左右するかもしれないプロジェクトが、極秘裏に進行していた。数十年後。ナノテク素材の研究者・汪森(ワン・ミャオ)は、ある会議に招集され、世界的な科学者が次々に自殺している事実を告げられる。その陰に見え隠れする学術団体“科学フロンティア”への潜入を引き受けた彼を、科学的にありえない怪現象“ゴースト・カウントダウン”が襲う。そして汪森が入り込む、三つの太陽を持つ異星を舞台にしたVRゲーム『三体』の驚くべき真実とは?本書に始まる“三体”三部作は、本国版が合計2100万部、英訳版が100万部以上の売上を記録。翻訳書として、またアジア圏の作品として初のヒューゴー賞長篇部門に輝いた、現代中国最大のヒット作。
そう、三体の主人公は基礎科学者たち。
世界の科学者が叡智を振り絞り、人類の運命を左右するプロジェクトに臨みます。
宇宙から攻め入る侵略艦隊、迎え撃つは地球の叡智を結集した科学者軍団。
宇宙規模での基礎科学をめぐる闘い。
この物語は、基礎科学者のみならず、すべての科学者に誇りを、そして希望を取り戻させてくれる物語です。
私自身の専門は、「三体」で描かれる物理学とは大きく距離が離れていますが、それでも同じ科学者という括りで見た時に、「そうだ、私たちは世界に必要とされているんだ」と科学者であることに高揚感を感じさせてくれました。
研究をしていると、「なんでこんなチマチマしたことやらなきゃいけないんだ、地味すぎる、そして誰にも理解されない」と拗ねてしまうことがあるかもしれませんが、そんな時は「三体」を読んで、「科学者つえーーーー」と心の中で大合唱しましょう。
キャリア
大学教授という仕事
● 私はこの本を読んで「アカデミアやめとこ」と思いました笑
そう、あれはまだ私が「アカデミアもいいかも、頑張っちゃうかも!」と思っていた頃。
アカデミアの仕事を知るために手に取ったのが、この一冊。
目次に惹かれたんですね。
世間のイメージは「大学教授=授業する人、研究する人」なんでしょうが、この本を読めば、そんな仕事がほんの一部に過ぎないということがよくわかります。
目次の一部をご紹介すると、
研究資金の獲得、
管理運営の仕事、
入学試験、
学会活動、
他大学の非常勤講師
などなど。
「そんなことまで?!」と思うような仕事が並びます。
あとは、増補版では非常にユニークなトピックが追加されていて、
国立大学から私立大学へ、
特任という身分、
ポスドク事情
など、アカデミアの阿鼻叫喚が聞こえるような事実が赤裸々に語られています。
そして私は、この本を読み、アカデミア就職をそっと選択肢から消したのでした。
そういう意味では、私の人生を変えてくれた一冊であることは間違いありません。
僕は君たちに武器を配りたい
先ほども紹介した瀧本哲史氏に再びご登場頂きます。
こちらは同じく「武器としての教養」シリーズの一冊、通称”ボクブキ”。
表紙はこう語ります。
本書は、これから社会に旅立つ、あるいは旅立ったばかりの若者が、非情で残酷な日本社会を生き抜くための、「ゲリラ戦」のすすめである。
本書こそ、私が疫学専門家になるきっかけを与えてくれた一冊。
本書は、コモディティ人材になることへの痛烈な警鐘を鳴らします。
コモディティ人材とは、高い付加価値をもっていたにもかかわらず、競合の台頭によって差別化が失われ、代替可能になってしまった人材のことを指します。
エリートと呼ばれる若者が、プログラミングや英語などわかりやすいスキルを身につけることに囚われ、コンサルタントや官僚となり、その人でなくとも可能な仕事を身につけていく。
そして、コモディティ人材の反対が、「その人にしかできない専門性を有したスペシャリスト」ですね。
本書を読み、私はスペシャリストとして生きることを決意しました。
そして大学院に進学し、今では国内の企業で数えるほどしか存在しない疫学専門家として働いています。
この本がなければ今の私はなく、きっと確たる専門性も持たぬままに「キャリアどうしようかなぁ」という不安に駆られながら、企業人としての生活を送っていたことと思います。
定型がなく、目まぐるしく変わる現代というゲリラ戦を生き抜く中での心構え。
本書は、そんな武器を与えてくれます。
海外で研究者になる -就活と仕事事情
こちらは私が海外留学を検討していた際に手に取った一冊。
学生として海外で学ぶということに加えて、仕事として海外で研究者になるということがどういうことなのか知りたかった。
日本人にはまだ貴重な、17名の海外の大学で活躍する研究者の経験談を集約しています。
アメリカ、ヨーロッパ、アジアなど国もさまざま。
ポジジョンを取るための応募書類の書き方、面接、待遇交渉などの入口の話に始まり、ポジションゲットに成功した後の昇進、学生指導、そして予算の獲得など、ほんとうに赤裸々に海外の研究者生活を綴ります。
この本を読むまでは「海外で研究者として働けたらかっこいいなー」とぼんやりと描いていたイメージが、読後は一気に生活臭をもって私の頭の中に広がりました。
遠い海外の研究者生活を、読者にとってもリアルなものに近づけてくれる貴重な一冊です。
終わりに
いかがでしたでしょうか?
本記事で紹介した本たちが、皆さんの研究の支えになればとっても嬉しいです。
なお、「研究者のおすすめシリーズ」として2022年ガジェットベストバイはこちらで紹介しております。
私の研究環境を劇的に完全してくれたガジェットたちを厳選しておりますので、ぜひお楽しみください。
すきとほるからのお願い
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