こんにちは、すきとほるです。
【千夜千報】では、忙しくて論文を読む時間がない方に向けて、毎晩10分で読める論文紹介をお届けします。
ただ紹介するだけではなく、疫学専門家の私が考える「ここが凄いよ!」ポイントを丁寧に解説していきたいと思います。
【千夜千報】を通して、「なるほど、ここはこうやって読めば良いのか」、「このデザインは、こういう意図でやっているのか」という論文を読む・書く力を養って頂くことが狙いです。
また、医学や医学研究と関わりのない非専門家の方にも、「なるほど、話題になっているこの研究って、こういうことをやっているんだ」とお楽しみ頂けるような内容になることを心がけています。
もちろん、論文を読む際には原著を読むに越したことはありませんが、日々忙しくするなかで何十分もかけて論文を読むのは難しいという方もいらっしゃるでしょう。
そんな方が、夜寝る前のほんのひと時に、
「へぇー、こんな論文あるんだ」
「この手法、面白そうだからメモしておこう」
「なるほど、ニュースでやってた研究、こういうことだったんだ」
などと、寝る前の物語りの代わりにでも【千夜千報】を覗いていってくださいませ。
なお、【千夜千報】では著作権の関係から、誰でも自由に閲覧できるOpenの論文のみを取り上げますので、ご留意くださいませ。
論文情報
アブストラクト
研究デザイン
リサーチクエスチョン
2010-2019年にかけて、米国の入院患者における有害事象の発症頻度はどのようなトレンドを辿っているか
デザイン
Serial Cross-sectional研究
対象集団
2010-2019年にかけてMedicare Patient Safety Monitoring System(MPSMS)に登録された有害事象。
MPSMSは米国の全州から入院患者における21の有害事象のデータを収集するデータベース。
なお、今回は急性心筋梗塞、心不全、肺炎、大手術、その他の原因の5つを原因に入院した18歳以上の患者のそれぞれをコホートとした。
アウトカム
薬剤有害事象、院内感染、術後合併症、一般の有害事象の4つのカテゴリーのもと、合計21の有害事象が測定された。
そのうちPrimaryのアウトカムは、以下3つの指標の複合アウトカムである。
- リスクを有していた有害事象の発生割合
- 1つ以上の有害事象を経験した患者割合
- 退院1,000件あたりの有害事象件数
解析
ポアソンでリンクした混合効果モデルによってアウトカムのトレンドをモデル化した。
なお、患者・病院特性は調整されている。
たぶんこれだけ聞いてもイメージが湧かないと思うので、先に結果の一部を表示します。
こんな感じで、年数も変数として投入しているため、2010年をReferenceにした際の各年のリスク比が算出されます。
ポワソン回帰を行っているのは、オッズ比ではなくリスク費を算出するためですね。余談ですが、この論文では一部のアウトカムに修正ポワソン回帰というものを使用していますが、これはロバスト分散というものを推定して、ちょっといい感じに統計上の問題を解決してくれる手法です。
患者・病院特性を共変量として調整しているのは、「年によって入院する患者とか病院の特性が変わっちゃうとフェアな比較ができないから、それ調整しちゃおうぜ」っていうモチベーションです
結果と考察
2010から2019年にかけて、院内の有害事象の発生は大きく低下した。
今日は仕事で小難しい研究デザインを考えていて疲れたので、シンプルな研究にしてみました。
終わりに
千夜千報では疫学・統計学の知識を利用し、さまざまな角度から論文をクリティークしております。
この記事で登場する知識は、『疫学に関する記事まとめ』としてこちらの記事の中にまとめてありますので、『もっと突っ込んで疫学を勉強したい!』という方は、ぜひこちらの記事を眺めてみてください。
トピックごとに専門性を深めるような記事もあれば、初心者向けの疫学・統計学の書籍や、無料のオンラインセミナーの紹介なども行っております。
すきとほるからのお願い
本ブログは、読者の方が自由に記事の金額を決められるPay What You Want方式を採用しています。
「勉強になった!」、「次も読みたい!」と本ブログに価値を感じてくださった場合は、以下のボタンをクリックし、ご自身が感じた価値に見合うだけの寄付を頂戴できますと幸いです。
もちろん価値を感じなかった方、また学生さんなど金銭的に厳しい状況にある方からのご寄付は不要です。
引き続き情報発信していく活力になりますので、ぜひお気持ちに反しない範囲でご寄付をお願い致します!