こんな人におすすめの記事です。
- 大学を辞めて企業へ転職したい、転職先を探し始めた
- 大学で働いているけど、将来企業に転職することも視野に入れている
こんなお悩みを解決します。
この記事では国立大学と外資系企業で研究者として働く私が、大学・企業の双方の経験を元に「大学からの企業転職でリサーチすべきポイント」を分かりやすくお伝えします。
「大学しんどいから企業に転職したいんだけど、どうしたいい?」っていう相談が増えてきたよ
本ブログは、私個人の責任で執筆され、所属する組織の見解を代表する物ではありません
①Linkedinに登録しよう
Linkedinのアカウントなしで転職しようとするのは、こん棒に布の服装備で魔王戦に挑むようなものです。
別のセクションで話しますが、転職は基本的にはヘッドハンターを介して行いますので、Linkedinのアカウントがなければそもそも転職の入り口であるヘッドハンターと出会うことができません。
また、それ以外にもLinkedinに登録するメリットがあります。
- 卒業大学や所属別に検索をかけられるので、転職先の企業の方と繋がるチャンスがある(母校の先輩などは特に心強い)
- ヘッドハンターから提示される求人をスカウターにし、自分の専門性が刺さる職種や妥当な給与の目安が得られる
- 自己紹介の書き方でヘッドハンターの反応も変わるので、「どこをどうアピールすれば自分の専門性がより輝くか」という判断材料になる
などですね。
もちろんただ登録するだけではヘッドハンターからは声がかからないので、オフィシャルな顔写真を設定し、職歴、学歴などは簡潔かつ要点を記載しましょう。
それでもあまりヘッドハンターから声がかからないのだとしたら、それは「あなたの専門性が魅力的に見せられていない」ということの裏返しですので、試行錯誤を重ねるしかありません。
ヘッドハンターは転職支援のプロですから、そのヘッドハンターにとって魅力的でない経歴は、同じく採用企業にとっても魅力的でない恐れが高いです。
魅力的なLinkedinのプロフィールを作るためには、事前にある程度関心のある業界、職種を定めておき、ヘッドハンターからそのジョブディスクリプション(後述)を入手しましょう。
そして、同職種のジョブディスクリプションの中で共通して求められている専門性、経歴があれば、それらのキーワードを散りばめるようにしてプロフィールを書くようにすれば、「企業が欲する人材」としてあなたの経歴を演出できます。
②自身の専門性との親和性の高い転職先を見つけよう
大学から企業に転職する際、まず大きな分かれ道として
- 専門性を活かせる仕事にするか
- 専門性とは関係のない仕事にするか
という2択があります。
私は「専門性を活かせる仕事にする」ことを強くお勧めします。
専門性を活かさない場合、企業からみたらあなたは完全に”新人”となります。
しかしながら、転職というのは若ければわかいほど有利になる世界(年齢に応じた経験・専門性がある場合は別です)、すでに新卒の就活組から大きくリードをつけられている状態です。
専門性や経験のような特別な強みがなければ、基本的には若い候補者にポイントが入りやすく、また転職できたとしても新卒同様の給与となる可能性が高いので、良い待遇は期待できません。
ですので、大学を離れて企業へ転職する際には
では「あなたの専門性と親和性のある企業」をどうやって見つけるのか。
企業採用には大きく分けるとジョブ型採用とメンバーシップ型採用の二つがあります。
- ジョブ型採用:必要な職務に対し、その職務に適した経験・専門を持つ人材を採用する
- メンバーシップ型採用:採用時に職務内容を限定せず、入職後に様々な仕事を経験させる
大学からの転職組が目指すべきは当然ながら前者のジョブ型採用ですね。
ではジョブ型採用における職務内容を確認するにはどうしたらよいか。
そのためにはジョブディスクリプション(JD)と呼ばれる求人票に目を通しましょう。
JDには仕事の内容、必要な経験・スキル、学位、あると望ましい経験・スキルが明確に書かれています。
ちなみに以下は第一三共の薬剤疫学職のジョブディスクリプションですね。
ちなみにこのJD、かなり厳密に要件が設定されており、特に「必要な経験・スキル」のところはしっかりと該当する人物でないと基本的には採用は難しいと考えた方が良いです。
また、JDを眺めていると「この要件は満たしているけれど、100%自分の専門性と一致するわけじゃないなぁ」と高確率で感じます。
もちろん、ある程度の一致性を持たせることは大切ですが、専門分野なんてニッチな世界であなたの専門性に100%合致する求人があるなんてことはまずありませんので、この一致性にこだわりすぎてはいけません。
それなら「最初はこの職務内容に縛られるけど、入社して信用を勝ち取って自分の専門性が100%発揮できるような環境を作ってやろう」くらいの気持ちでいるべきです。
③ヘッドハンターを活用しよう
そういえば上で言ってたジョブディスクリプションってどうやってゲットするの?
ヘッドハンターから送られてくるよ
ヘッドハンター
大学にいると「噂では聞いたことあるけど、ほんとに実在するの?」と思うかもしれません。
そんなヘッドハンターですが、企業で働いていると日々雨や霰のように連絡がきます。
先週だけでも私のLinkedinでも3名の新しいヘッドハンターから求人紹介がきています。
ヘッドハンターを介して企業にアプライするまでの道のりはこんな感じ。
- Linkedinでアカウントを作る
- 経歴、学歴や専門性、業績をしっかりと分かりやすく書く
- その分野のヘッドハンターから徐々に連絡がきはじめる
- そのうち信頼できる1人を見つけ、気になる企業にアプライする
- 企業の採用担当と面接をする
ちなみにLinkedinをまともに書いて、かつ魅力的な専門性であれば「どこにこんな潜んでたんだ」と驚くくらい日々ヘッドハンターからの連絡を受けることになります。
ヘッドハンターが持っている案件は、よほど特殊な事業がない限りは共通しているので、案件ベースではなく「そのヘッドハンターが人間的に信用できるかどうか」ということをベースにしてお付き合いするヘッドハンターは選びましょう。
信用できるヘッドハンターを見つける際には以下のことをアセスメントすると良いと思います。
- 人として真っ当か
- 案件の良いところだけでなく悪いところもしっかり教えてくれるか
- 特定の案件をゴリ押しするようなことがないか
- 採用時には企業との待遇交渉を任せられるだけの手腕があるか
- 日本人が外国人か
ヘッドハンターは外資系が非常に強い世界でして、担当する業種によっては50%くらいは英語話者の外国人ヘットハンターで構成されます。
また「案件ゴリ押し」についてですが、ヘッドハンターのマネタイズの仕組みを考えると納得がいきます。
ヘッドハンターが紹介した候補者の採用が決まると、企業はヘッドハンターに対して候補者の年俸のX%を払うことになるんですね。
つまり、ヘッドハンターには
- とにかく”入り口”である採用になんとしてもねじ込む
- 採用時の年俸を少しでもあげる
という方向に強いインセンティブが働いているわけです。
悪質なヘッドハンターになると「適性なんて考えずに大量の候補者にとにかく求人票を送りつけて、口八丁手八丁で求人にアプライさせ、採用後はさようなら」みたいな方もいらっしゃいます。
一方、信頼できるヘッドハンターさんには「数年単位の長い目線で候補者と付き合いをしてくれて、候補者のキャリア形成に伴走してくれる」ような素晴らしい方もいらっしゃいます。
こればかりはご縁に期待するしかないので、Linkedinに登録し、そのように信頼できるヘッドハンターさんに巡り会えるチャンスを待ちましょう。
ちなみに同じリクルートサイトだと日系大手のビズリーチがありますが、私は以下の理由でお勧めしません。
- 外国人のヘッドハンターが少なく、また外資系企業の案件が少ない
- 非大手事業所のヘッドハンターも多数在籍しており、質のばらつきが激しい
- 紹介される案件の質が低い(聞いたこともないような企業の案件や、適性がまったくなさそうな案件など)
また、「ヘッドハンターを活用しない」という選択肢も理論的にはあり得ますが、こちらも以下の理由でお勧めしません。
- かなりの数の案件が一般公開されずにヘッドハンターを介したアプライのみ可能となっている
- 関心のある企業や業界のリアルの声をヘッドハンターから入手できない
- 年収交渉を自分でせねばならず、カドが立つ恐れがある
- 企業との面談日程の調整などのやりとりを自分でせねばならない
余談ですが、ヘッドハンターが高頻度に使う用語として
「グローバルへの異動もありうるポジションです」
「パフォーマンスが高ければすぐにでも管理職へ昇進可能です」
「アジア全域をみるお仕事です」
などがありますが、これらは「行けたらいきます」と同じレベルで信用しては行けない言葉なので、一切期待しないようにしましょう。
転職において信じられるのは契約書に書いてあることのみです。
もしどうしても通したい要求があるのであれば、契約書に明文化されない限りは「いつ手のひらを返されてもおかしくない」と覚悟しておいた方が良いでしょう。
④Openworkで企業情報を収集しよう
たとえ信頼できるヘッドハンターがいたとしても、彼らの大目標は「転職を実現させ、紹介料をもらうこと」ですので、どうしてもポジショントークにならざるを得ません。
そんな時は退職者による企業評価サイトであるOpenworkを活用しましょう。
ヘッドハンターの話がいわばポジティブ寄りのポジショントークだとしたら、Openworkは退職者のそれですから、ネガティブ寄りのポジショントークが集まることになります。
Openworkではこのように数百人以上の退職者の評価を使って企業が点数化されます。
https://www.vorkers.com/company.php?m_id=a0910000000G8f7
社員口コミでは項目別に詳細な評価が記入されていますし、なんと言っても超具体的に給与額まで公開されているのがありがたいですね。
Openworkにあげられている口コミのうち、あなたの経験年数、職種に近いものを見つけて参考にするのが良いでしょう。
⑤企業とカジュアルミーティングをしよう
カジュアルミーティングとは「正式にアプライが決まったわけではないけれど、企業と候補者がお互いのことをより知り合うために開催されるミーティング」です。
「お互いのことをより知り合う」と書くと、双方が探り合っているように思えるかもしれませんが、実はこれちょっと語弊があります。
企業側がカジュアルミーティングをOKするのは、「その候補者に企業に関心を持ってもらい、アプライまで進んで欲しいから」です。
だって企業側は面接の中で候補者にあれやこれや質問できるわけですから、上記の理由以外にはわざわざ忙しい中で時間を割いてカジュアルミーティングなんてするメリットがありません。
というわけで、カジュアルミーティングでは基本的には候補者が企業に対して質問をぶつけます。
私がよく聞く質問はこんな感じでしょうか。
- 繁忙期と閑散期の帰宅時間を教えてください
- 土日の業務時間はどれくらいですか
- 毎年の昇給はどれくらいですか
- 昇進に経験年数は関係しますか
- 専門に関わらない仕事はどのくらいありますか
- この仕事を選んで良かったこと、残念だったことを教えてください
めちゃくちゃストレートですね、こんなこと聞いて嫌がられませんか?
カジュアルミーティングを設定してくれている時点で企業は候補者に強い関心があるから大丈夫。むしろこんなんでヘソを曲げるような会社ならこっちから願い下げてやればいいよ。
ちなみに「カジュアルミーティングの結果は本選考にするかどうか」という質問ですが、私は「するかしないか分からんから、それなら面談相手にも好きになってもらえるようなBehaviorで望め」と助言します。
あなたが採用担当なら、カジュアルミーティング後に企業にアプライしてきた候補者がいれば、面談担当に「あの人どうだった?」と聞いてみたくなりますよね?
そんな時に、
「なんかイケすかない奴だったよ」と紹介されるか、
「すごく真面目て好感が持てたよ」と紹介されるかでは、採用担当の心持ちは全く変わるでしょう。
ちなみにカジュアルミーティング後のプロセスですが、十中八九ヘッドハンターは「とりあえず一次面接だけでもしてみましょう、いつがいいですか?」と息を吐くように自然な流れで本選考に進ませようとしてきます。
ここで気を抜いていると意にそぐわない求人にアプライされ、時間を無駄にすることになるので、どれだけヘッドハンターが「これ当たり前だから、みんなやってるから」みたいなノリでアプライを進めてきたとしても、鉄の心で断りましょう。
カジュアルミーティング=企業が候補者に関心を持っているということなので、ヘッドハンターからしたら採用に繋げて紹介料もゲットするチャンスだからね
「せっかくカジュアルミーティングをしてくれたのに、採用面接にアプライしないってなんか悪い気がする」と思うかもしれませんが、それは単に「企業側が候補者を魅了できなかった」というだけですので、遠慮なくスルーしましょう。
終わりに
研究職キャリアの新たなカタチとして、企業とアカデミアのパラレルワークについて解説したオールインワンのnote記事を執筆しました。
私自身がこのキャリアを数年間実践していますが、双方のキャリアの弱みを補完し、さらに研究者として活躍の場を広げられる革新的なキャリアスタイルだと感じています!
実際の外資企業と国立大学で研究職としてパラレルワークを行う私の目線からこんなことが解説されているので、ぜひご覧ください。
- 企業・大学それぞれでの研究者としての仕事内容
- パラレルワークの魅力
- パラレルワークのためのポジションの取り方のコツ
- パラレルワークのワークライフバランス
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