こんにちは、すきとほる疫学徒です。
お便り返しでは、実際にブログの読者の皆様から頂いた質問のうち、公開することの公益性が高いと判断したものを公開させて頂いております。
なお公開に際して、相談者様の氏名、所属、その他個人が特定される可能性のある情報は削除しています。
ご相談
初めまして、****と申します。
現在キャリアについて模索中なのですが、人材紹介サービスを通じてEpidemiologist/Health Economistの職を幾つか紹介して頂いたことから、すきとほる疫学徒様のより具体的なご経験を伺いたいと思っております。
特に外資製薬のGlobalポジションを獲得するまでに必要なスキル、年数についてや、具体的な外資製薬会社の特徴があればご教示頂けますと幸いです。
お返事
まず、外資製薬のGlobalポジションを得るための経路は大きく分けて2通り存在します。
一つ目は、本社(アメリカかヨーロッパにあることが殆どですが)で採用され、そのまま本社所属のEpidemiologistとなるというものです。
二つ目は、自国(日本人でしたら日本法人ですね)で採用され、そして所属のみGlobalになるというものです。
前者は非常にハードルが高く、私の知る限りでは多くの製薬企業において、本社採用のEpidemiolgoistは本社がある国出身であるか、それかPhDをその国で修了した他国籍の方であるかという場合が殆どです。
ですので、もし相談者様がそのどちらかに該当しない場合、かなり壁が高くなります。
後者は前者に比べると壁が低いのですが、これはそもそもその外資製薬が「日本法人採用だが、所属はGlobal」という雇用形態を許可しているかどうかということに大きく影響されます。
ですので、Globalポジションを狙っている場合は、事前に面接段階でそのような雇用形態があり得るのかということを確認した方が良いでしょう。
次に必要なスキル、年数について私の知る限りでご回答させて頂きたいと思います。
まず年数ですが、外資系の企業は経験年数ではなくシンプルに業績で人材を評価する傾向にあるため、さほど大きなファクターではありません。
優秀であれば短い勤務年数でも昇進しますし、その逆もまた然りだと思います。
次に必要なスキルについてです。
まず、言わずもがな英語は必須です。
Globalポジションの場合は、同僚、上司は基本的にGlobalの人間になりますので、電話もメールも資料も全て英語です。
疫学に関する専門的なことが議論できるだけの英語力が必要になるかと思います。
加えて必要なスキルが、Epidemiologistとしての実績です。
Epidemiologistはサイエンティストとしての採用ですので、過去の論文業績によって評価されます。
筆頭著者として、何本の論文を、どんなテーマで、どのJournalにPublishしているかという点が最も見られるでしょう。
そして研究内容ですが、少なくとも1本は日本の医療大規模データ(DPC, JMDC, MDV, NDBなど)を用いた研究である必要があると思います。
理由は二つあり、一つ目は外資製薬のEpidemiolgistの最も大きな仕事が医療大規模データベースを使った研究の立案、実施だからです。
入社直後から研究のリードサイエンティストとしてプロジェクトに投入されることになるので、教えてもらいながら仕事を覚えていくという状況ではなく(そもそも入社時に他のEpidemiologistがいない可能性も高いです)、限られたタイムラインの中で、チームメンバーに対して道筋を示していかねばなりません。
その専門家として雇われているEpidemiolgositが「分かりません」と言ってしまうと、プロジェクトでは誰も対応できないという事態になってしまいかねません。
それを避けるには、疫学の知識に加えて、製薬企業でよく使われている日本の診療報酬請求データベース、電子カルテデータベースの知識を有しておく必要があります。
「このリサーチクエスチョンにはどのデータベースを使えばいいか?」、「この変数を定義するには、データベースのどの情報を組み合わせれば良いか」、「この変数の妥当性はどの程度か?」など、それぞれのデータベース特有の癖を把握しておかねばなりません。
二つ目は、Globalから日本のEpidemiologistに期待されることが、日本の医療大規模データベースに精通していることだからです。
世界中で医療大規模データベースは使われていますが、欧米を中心とした知見は既に他のGlobalのEpidemiologistが有しており、彼女・彼らにとっては「まだ社内に十分な経験が蓄積されていない、日本の医療大規模データベースに関する部分を補ってくれる人材を手に入れること」が、わざわざ日本でGlobalポジションのEpidemiologistを採用する理由です。
最後の質問、”具体的な外資製薬ごとの特徴”に関しては、申し訳ありません、お答えは控えさせてください。
私自身がまだ経験が浅く、業界全体を把握できていないこと、また守秘義務に抵触する可能性があるためです。
Globalポジションは、海外のEpidemiologistと協同でき、大変魅力的なポジションだと思いますので、ぜひご希望通りのポジションをご獲得されることを願っております!
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