【千夜千報:第2報】経口モルヌピラビルの非入院コロナ患者における効果

こんにちは、すきとほるです。

 

【千夜千報】では、忙しくて論文を読む時間がない方に向けて、毎晩10分で読める論文紹介をお届けします。

ただ紹介するだけではなく、疫学専門家の私が考える「ここが凄いよ!」ポイントを丁寧に解説していきたいと思います。

 

【千夜千報】を通して、「なるほど、ここはこうやって読めば良いのか」、「このデザインは、こういう意図でやっているのか」という論文を読む・書く力を養って頂くことが狙いです。

また、医学や医学研究と関わりのない非専門家の方にも、「なるほど、話題になっているこの研究って、こういうことをやっているんだ」とお楽しみ頂けるような内容になることを心がけています。

 

 

もちろん、論文を読む際には原著を読むに越したことはありませんが、日々忙しくするなかで何十分もかけて論文を読むのは難しいという方もいらっしゃるでしょう。

 

そんな方が、夜寝る前のほんのひと時に、

「へぇー、こんな論文あるんだ」

「この手法、面白そうだからメモしておこう」

「なるほど、ニュースでやってた研究、こういうことだったんだ」

 

などと、寝る前の物語りの代わりにでも【千夜千報】を覗いていってくださいませ。

 

 

なお、【千夜千報】では著作権の関係から、誰でも自由に閲覧できるOpenの論文のみを取り上げますので、ご留意くださいませ。 

   

 

 

本ブログは、私が業務上知り得たいかなる情報にも基づかず、一般論もしくは広く公開された情報のみに基づき執筆されています
本ブログは、私個人の責任で執筆され、所属する組織の見解を代表する物ではありません

 

 

 

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論文情報

Jayk Bernal A, Gomes da Silva MM, Musungaie DB, Kovalchuk E, Gonzalez A, Delos Reyes V, Martín-Quirós A, Caraco Y, Williams-Diaz A, Brown ML, Du J, Pedley A, Assaid C, Strizki J, Grobler JA, Shamsuddin HH, Tipping R, Wan H, Paschke A, Butterton JR, Johnson MG, De Anda C; MOVe-OUT Study Group. Molnupiravir for Oral Treatment of Covid-19 in Nonhospitalized Patients. N Engl J Med. 2022 Feb 10;386(6):509-520. doi: 10.1056/NEJMoa2116044. Epub 2021 Dec 16. PMID: 34914868; PMCID: PMC8693688.

 

 

 

アブストラクト(下で解説するので飛ばしてもOK)

 

 

 

 

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研究デザイン

リサーチクエスチョン

経口モルヌピラビルの非入院患者における有効性・安全性はどのようであるか?

 

 

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デザイン

二重盲検化ランダム化比較試験

 

「二重盲検化」の「ランダム化」の比較試験とは、薬を開発する際のゴールドスタンダードな研究デザインです。

「二重盲検化」とは、研究に関わる患者さん・医療者の双方において、『どの患者さんがどの薬を割り付けられたかを分からなくする処置』を指します。これは、患者さん・医療者が薬の割り付けを知ってしまっていると生じかねない研究結果の歪み(測定バイアス)を防ぐために行われます。

ランダム化とは、患者さんへの薬の割り付けをランダムに行うことで、これによって薬を飲んだ群・飲んでない群という2群間において、患者さんの特性を均質にして、フェアな比較が行えるようにするための工夫です。

 

 

対象集団

軽症から中等症のCovid-19に感染しており、発症から5日以内で、入院しておらず、少なくとも一つはCovid-19が重症化するリスク因子(高齢、がん患者、肥満があるなど)を持っており、Covid-19のワクチン未接種である患者。

除外基準も幾つか設定(複雑になるので、詳細を知りたい方は論文へ)。

 

なお、最終的な研究対象は20カ国の107施設で登録された1,433名の患者である。

 

 

曝露

ランダムに1:1の割合でモルヌピラビルとプラセボ(薬のような形をしているけれど効果はない偽薬)を割り付け、1日2回、5日間に経口内服。

 

なぜわざわざ比較群にプラセボを投与するのでしょう?
プラセボを投与しない場合、片方が何も飲まない患者さんになるため、患者さんは自分達がモルヌピラビル群か非治療群のどちらに割り付けられたか分かってしまいますね。
すると、本当は薬自体には効果がなかったとしても、「薬を飲んだから効果があるに違いない」、「薬を飲んだから、こういう点は気をつけなくては」というプラセボ効果が生じてしまいます。専門用語では測定バイアスなんて呼んだりしますが。
これを防ぐために、モルヌピラビル群を投与しない群でも、わざわざそっくりの錠剤を作って内服してもらうんですね。

 

 

アウトカム

有効性

Primary endpoint(最も着目するアウトカム)は治療の割り付けから29日以内のあらゆる理由による入院もしくは死亡の発生。

 

Secondary endpoint(副次的に着目するアウトカム)はWHO 11-point Clinical Progression Scale(Covid-19の重症度を判定する尺度)および患者の自己報告によるCovid-19の症状。

Covid-19の症状の改善・悪化は各患者のベースラインの重症度と比較して判定された。

 

また、Exploratory endpoint(探索的なアウトカム)として、Covid-19のウイルス量を設定した。

 

医学研究では、このようにアウトカムに重要性の観点から順位づけをすることが多くあります。
Exploartory endpointは「仮説を証明するためには必須ではないけれど、薬と主要なアウトカムとの関連を考察するうえでの材料となりうるアウトカム」として設定することがあります。

 

 

安全性

治療終了から14日目までの有害事象を評価。

  

  

解析

モルヌピラビル群と非治療群との間で、Primary endpoint(割り付け29日以内の入院・死亡)の発生割合を比較(治療への割り付けを、発症から3日以内・4日以降のサブグループに分けて解析)。

 

その他複数の解析を実施(詳細は論文へ)。

 

 

  

 

結果と考察

 

  

モルヌピラビル群ではプラセボ群と比較し、治療開始29日以内の入院および死亡のリスクが低下した(上のグラフはDay 0からDay 29までのイベント発生者の割合を示しており、モルヌピラビル群である黄色線がプラセボ群より低いイベント発生割合で推移していることがわかります)。

 具体的な数字を言うと、3%の低下である。

 

また、患者の特性ごとのサググループ解析においても、一貫してモルヌピラビル群でリスクが低下していた。

 

このように、複数のサブグループにおける効果の方向性の検証は、薬剤の効果を検証する上で重要になります。複数の性質が異なるグループでも一貫して同じ方向に効果が出ていれば、効果は偶然ではないと判断しやすくなるからです。

 

 

また、安全性においても”少なくとも一つの有害事象を経験した患者割合”は、モルヌピラビル群とプラセボ群で同等であった。

 

 

結論として、Covid-19の重症化リスクがあり、非入院・ワクチン未接種の患者において、経口モルヌピラビルのCovid-19発症5日以内の投与は有効であり、また顕著な安全性上の懸念がないことがわかった。

    

    

       

           

終わりに

千夜千報では疫学・統計学の知識を利用し、さまざまな角度から論文をクリティークしております。

 

この記事で登場する知識は、『疫学に関する記事まとめ』としてこちらの記事の中にまとめてありますので、『もっと突っ込んで疫学を勉強したい!』という方は、ぜひこちらの記事を眺めてみてください。

 

トピックごとに専門性を深めるような記事もあれば、初心者向けの疫学・統計学の書籍や、無料のオンラインセミナーの紹介なども行っております。

 

  

 

 

     

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