こんにちは、すきとほる疫学徒です。
今日は、疫学専門家としての職務経験がない方でもアプライできる疫学専門家のポジションをご紹介したいと思います。
製薬企業の疫学専門家の募集要項を見ていると、「数年の疫学専門家勤務経験あり」と書いてあることが多く、未経験の方にとってややアプライのハードルが高いように感じられます。
私は以前、国際機関で働くことを目指している時期があったのですが、どの募集要項も「国際保健の〜に関わる分野での勤務経験があること」などと書かれており、そうした参入障壁の高さを笑い話にして、「国際機関で働くには、国際機関で働いた経験を持つこと」などとどなたかが冗談を言っていたのを思い出します。
さすがにそこまで厳しいとは言いませんが、疫学専門家(というか、理系のスペシャリストポジション全体?)も採用時には前職経験を求められることが多い気がしています。
というのも、今はどの組織でも疫学専門家が足りていないため(抱えていても1人〜3人程度だと思います)、入社した次の日から即戦力になることを期待する&新人に対する十分な教育体制を用意できていない、という採用側のリソース不足があるからと感じます。
「そんなこと言ったら、いつまでも疫学専門家になれないじゃないか!」と憤りの声が聞こえてきそうですが。。。
そうした背景もあり、今回の記事を執筆するに至りました。
なお、本記事で紹介するポジションはあくまでも私の観測できた限りのものであり、もちろんこの世界には私の知らない未経験OKの疫学専門家ポジションも溢れていると思いますので、気になる方はぜひぜひ皆さんご自身で探してみてください。
医薬品医療機器総合機構(PMDA)
日本の医薬品医療機器の承認審査、健康被害の救済、そして安全性と有効性の担保を役割としている、行政組織、PMDAですね。
PMDAも当然ながら疫学専門家を採用しています。
こちらの応募資格の通り、アの条件では「修士課程以上の大学院修了者及び2022年度内に博士課程修了見込みの方」と書いてありますので、未経験者も大学院卒業後に直接アプライ可能であることが分かります。
行政機関ですので、製薬企業のように「ガンガン行くぜ!」みたいな給料体系ではなく、またグローバル経験をどれだけ積めるのかというのは私には未知数ですが、それでも「PMDAでの勤務経験あり」というのは、今後企業の疫学専門家として生きていこうと思っている方であっても、かなりの強経歴だと思います。
医薬品医療機器の承認審査を受ける側の企業で働く方にとっては、「PMDAはどう考えているか」というのは常に頭の片隅にあり続ける問いの一つですので、その中で「PMDAで働いた経験からすると、〜です」と語れるのは、非常に大きな強みになるのではないでしょうか?
疫学専門家のファーストキャリアとしてのPMDAは、私個人としてはかなりアリな選択肢だと思っております。
ただ私はその内情は分からず、あくまでも「PMDAで働いてた経験って強いよね」という外枠からだけの判断しかできておりませんので、アプライを検討している方は、ぜひ実際に働いている方にお話を伺ってみてくださいませ。
リアルワールドデータ株式会社
200以上もの医療機関から集められた電子カルテデータで構築されるRWDデータベースを扱うベンチャー企業です。
大手企業ですと、疫学専門家と統計家は全く異なる募集、部署所属、業務内容となることが多いのですが、こちらは薬剤疫学・統計解析担当者と同じ枠で採用をかけているところが面白いですね。
もっと面白かったのは、疫学・統計解析担当者ではなく、薬剤疫学と言い切っている点です。
医療大規模データベースの使い道は、薬剤疫学以外にも、臨床疫学や社会疫学など幅広くあるのですが、ここであえて薬剤疫学と銘打っているのは、特に顧客として製薬企業を意識しているからでしょうか。
歓迎スキルとして英語による業務コミュニケーションが可能な方を求めているのも、メインの顧客として外資製薬がいるからだろうかなどと妄想しております。
必須スキル・経験には「製薬企業、CRO、規制当局、アカデミア等で統計解析業務の経験を有する方」とあるため、一見すると前職経験が必要なようにも感じられるのですが、大学院での研究経験を”アカデミアでの統計解析業務”と評価してもらえるのであれば、アプライの余地はあるように思います。
ベンチャー企業であれば、前職経験がなくとも能力次第では柔軟に採用基準を調整してくれるような気もしますので、未経験の方にとっては十分候補に入るのではないでしょうか(私が間違ってる可能性もあるので、気になる方は直接確認してくださいませ)?
こちらもPMDA同様に私は実際の勤務実態は知り得ていないのですが、RWDデータベースという日本有数の大規模電子カルテデータベースを扱える経験を積めるのは、非常に魅力的に思えました。
あと単純に京都に本社があるので、あわよくば京都民になれるのも個人的には推しポイントです。
国立がん研究センターがん対策研究所
がんの分子疫学という非常に特異的な領域、かつ博士号取得者という限定的な条件ですが、こちらも応募資格では前職経験の有無は問われておりませんでした。
国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター
医薬品・医療機器の費用対効果に関する研究をリードする国立研究所の機関になります。
これまで上げてきた疫学専門家ポジションは、どちらかと言えば医薬品・医療機器の有効性・安全性にフォーカスしたポジションがメインだったと思いますが、こちらは医療の費用対効果ということで、また違った切り口から疫学を実践できるところが魅力的ですね。
条件には博士の学位を有する者と書いてありますが、個別相談の結果によっては博士の学位なしでもアプライできそうな雰囲気ですので、修士卒直後から疫学専門家として働き始めたいという方にとっては良いかもしれません。
余談ですが、企業においては薬剤の安全性・有効性研究に携わる疫学の部署と、費用対効果に携わる疫学の部署は分かれていることが多いと思います。
前者がEpidemiologistという職名で呼ばれ、後者はHealth Outcome/HEORなどの職名で呼ばれることが多いですね。
なので、Epidemiologistで検索かけても求人がヒットしない方は、Health Outcome/HEORでも調べてみると良いと思います。
あとは、企業によってはReal World Data scientistなんていうふうに、Real World Dataを強調したポジションを用意しているところもあり、そちらも調べてみると良いでしょう。
私の印象としては、EpidemiologistやHealth Outcome/HEORは疫学研究そのものを実施する職種であるのに対して、Real World Dataと名の付く職種では、分野横断的にRWDの利活用・開発を進めていることが多い気がしています。
終わりに
すいません、自分の知見とGoogle先生を使ってできる限り探そうとしたのですが、未経験でもアプライできる疫学専門家ポジションはこれだけしか見つかりませんでした。。。
まさに「疫学専門家になるにはまず疫学専門家になれ」という現状を実感しております。。。
今回は対象にしませんでしたが、アカデミアはもちろん未経験の方でも採用していますよね(博士卒業後にそのままどこかのアカポスにという感じ)。
なので、いずれ企業にと考えている方であっても、まずアカデミアで経験を積むというのも一つの選択肢かもしれません。ただその場合、疫学以外の仕事(教育、大学や研究室の雑務など)もどっと増える気がするので、ピュアに疫学だけをやりたい人からしたら、モチベーションの見出し方に工夫が必要かもしれませんが。
そして、「経験者のみ」と書いてある求人であっても、私の個人的な印象としては、その人のスキル次第では柔軟な対応をしてくれるんじゃないかと思っています。
企業の疫学専門家は、「人が欲しい!でも条件に合う人が来てくれない」という状況だと思うので、たとえ前職経験がなくとも、別のところで疫学専門家としてのバリューを発揮できるのであれば(例えば、既に複数本のRWDに関連した筆頭英語論文を書いていることなど)、採用の土台には乗ってくるような気がしています。
これは完全に個人的な印象でしかありませんが。
とにかく、疫学専門家はまず専門性を持っていることが大前提の採用になりますので、もしポジションに就かれることを考えている方がいるのであれば、RWD関連の英語論文を書いて書いて書きまくっておくより他ないと思います。
前職経験がないのは他のバリューによってカバー可能ですが、そうした論文という客観的な形で専門性を保証してくれる武器がないままにアプライしても(論文が専門性を保証してくれるのか、ということは置いておいて)、ポジションを獲れる可能性はあまり高くないと考えています。
私が気づいていない、未経験可の疫学専門家ポジションも世の中には沢山あると思いますので、「ここ知ってるよ!」という機関がありましたら、ぜひ教えて頂けますと幸いです。
こちらの記事に追加させて頂きます。
それでは、本日もお読み頂きありがとうございました。
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