【疫学専門家の脳内を暴露】疫学思考をリアルな研究相談での会話を通してお伝え!

 

こんな人におすすめの記事です。

  • 疫学専門家に興味あるけど、どんなことするの?
  • 疫学専門家になるにはどれくらいの専門性があればいいの?

 

こんなお悩みを解決します。

『小難しい記事とかよくわからんから、疫学専門家になるにはどのくらいの経験があればいいのかめっちゃわかりやすく教えてくれ』

 

この記事では、疫学専門家として私が相談者様から「この薬について研究したい」とご相談と仮定してを、その中で考えていることを会話形式で超赤裸々に綴っております(会話はすべてブログ用のサンプルであり、実際の会話ではありません)。

 

科学的な内容にとどまらず、「専門家としてどう信頼を得るか」、「どのような言葉で伝えれば良いか」、「まず何を優先して伝えるか」といったソフトスキルの部分もがっつり綴っていきます。

なので、この記事を読むことで「企業の疫学専門家として、専門性以外にもどのようなソフトスキルが求められるのか」ということもお伝えできるようにしました!

 

会話をご覧になる際には、ぜひ以下の3点でどのような工夫をしているかという目線でアセスメントして頂けますと嬉しいです!

 

 

  

本ブログは、私個人の責任で執筆され、所属する組織の見解を代表する物ではありません

      

    

 

相談状況

  • すきとほるは製薬企業の疫学専門家
  • 社内の色々な部署から疫学研究、特に医療データベース研究の相談を受けている
  • ただし、すきとほるへの相談は義務ではなく、「いきなり医療データベース研究をやることになって困ったなぁ、そういえばすきとほるさんっていう人が詳しいって聞いたぞ、ちょっと相談してみようかな」と自発的にいらしている
  • その会社の扱う糖尿病治療薬Aの有害事象として骨折が懸念されており、そのリスクがどの程度かを調べなければいけない

      

なお、実際の会話と脳内の使い分けは以下です。

  • 会話:「」
  • 脳内:【】

  

また、今回のサンプル会話では記事の読者を意識して”あえて解説的に言語化”しているところもありますが、通常の思考ではそこらへんはスキップしています。

  

ちなみに私は、相談者様と会話する際には以下を徹底的に意識するようにしています。

  • 何よりもまずラポールを形成し、「専門家」として以前に「人」として信頼してもらえるように努める
  • 専門用語は絶対に使わず、相手の言葉で語る(使わざるを得ない時も丁寧に解説する)
  • 関係性は”対等”、一緒に考えさせて頂くというスタンスで
  • ただ結論を伝えるではなく「なぜそう判断したか」ということも解説し、教育的に関わる
  • 発言は1センテンスでシンプルに、0.7倍速で、常に笑顔で
  • 徹底して聴き、予算やタイムラインなども含めて相手の事情に敬意を払う、いかなる状況でも絶対に批難しない
  • 発言には責任を取るという覚悟で意見を伝え、そして責任を取る姿勢も示す
  • 研究の実現可能性について楽観的なことは言わず「研究が実現できない場合」があることもしっかりと理由と主にお伝えする

  

 

 

 

ステップ① ラポールを形成する

相談者😸:
「いきなり相談してしまってごめんなさい、メールでお伝えしたとおり、糖尿病治療薬Aの有害事象として骨折が危惧されていまして、そのリスクを確かめたいんですが、それにデータベース研究が使えないかと思いまして」

 

すきとほる😻:
【おー、ありがたい、ちょっとずつ色んな人に信頼してもらえるようになってきたぞ。せっかく相談に来てくれてるんだから、「相談してよかった」と思ってもらえるように頑張るぞ】

「わざわざ相談にいらしてくださりありがとうございます、ぜひお話を伺わせてください!」

 

 

《ポイント》

多くの相談者様は専門家にコンタクトする際には藁をも縋る思いでコンタクトしてくださることが多いでしょう。仮に既に名を知られている専門家ならまだしも、私のようにまだ若く、知名度も低い者なら尚更です。

ですから、私は相談に来てくださった方にはまず何よりも先に「相談に来てくださってありがとう」と、そのお気持ちに最大の感謝を示すようにしています。

 

もしここでネガティブな感情を持たれてしまうと、もう2度とその方は私のところに相談に来てくれないかもしれません。そうすると、十分な専門性の介入がないままに研究が先に進んでしまい、質の低い研究が世に出てしまう恐れがあります。その時に被害を被るのは患者さん・医療者ですので、これは絶対に阻止せねばなりません。

だから、疫学専門家がまず何よりも行うべきは相談者様とのラポール形成であり、「この人なら何とかしてくれるかもしれない」という温かな雰囲気を作り出すことだと私は考えています*。

*しばしば「何で相談に来なかったんですか⁈」と相談者様に怒りを露わにする専門家を目にしますが、あれはどうみても「相談に来てもらえるだけのプレゼンスを発揮できていなかった専門家側の責任」であり、完全に責任転嫁ですよね。

 

ちなみに私は、ラポール形成の一環として初対面の方とは5分ほど雑談の時間を取り、その後で初めて相談に入るようにしています(むしろこのファーストコンタクトの5分でその後の研究相談の質が決まると思ってます)。

研究相談といえど、相談者様の胸の内には「言えることと言えないこと」、「言いにくいことと言いやすいこと」があると思うので、 少しでもその垣根を取り払い、自由にお気持ちを話して頂くためです。また、ここで相手の医学・疫学への理解度をチェックしておくことで、その後の相談でどの程度の抽象度で、どのような用語を使って話せばいいかをアセスメントしておきます。

  

  

  

  

  

ステップ② クリニカルクエスチョンを知る

すきとほる😻:

【さて、とりあえずまずはどんな研究したいのかを聞こう】

「もしよければ、どんな研究をやりたいかを教えて頂けますか?」

【話が散らばると時間がもったいないので、フレームも提供しよう】

「できれば興味のある集団、薬、アウトカムあたりを教えて頂けると助かります!」

 

 

相談者😸:

「はい、集団は糖尿病の患者さんで、薬は治療薬A、アウトカムは骨折です」

 

 

すきとほる😻:

「ありがとうございます😊」

【なるほど、目的は記述疫学かな?それとも比較研究かな?】

「なるほどですね!ちなみに、研究としては”治療薬Aを使ってる人でどれくらい骨折が起きているか”っていうように発症頻度を出したい感じですかね?それとも”治療薬Aと他の薬を比べて、どっちが骨折のリスクが大きいか”ってことを知りたい感じですかね?」

 

 

相談者😸:

「えっと、どっちも知りたいです!」

 

 

すきとほる😻:

「わかりました、ありがとうございます!状況を知りたいので、もう少し質問させて頂いてもよろしいでしょうか?」

 

 

《ポイント》

さて、研究テーマを伺う段階ですが、大切なのは「こちらが何を聞きたいのかまずフレームワークを提示し、それを埋めてもらう形で相談者様の声を抜いてくる」ということです。相談者様も相談に使える時間は限られていると思いますので、ここは「こちらが主導するぞ」という姿勢をはっきり示して、声を聴かせてもらいましょう。

また、ここで自信をもって振る舞うことで、相談者様に「あ、この人しっかりしてるっぽい、イケるかも」と感じて頂くという狙いもあります。一挙手一投足、表情、そして発する言葉、その全てを「ラポールを形成する」という強烈な目的意識を持ってコントロールするよう努めています。

ただし、この時の注意点として私は「絶対に専門用語を使わない」ということを心がけています。だって専門用語使う専門家って偉ぶってて嫌じゃないですか笑?。相談者様の経歴や雰囲気から考えて(ここでも最初の5分の雑談が活きます)、投げかける用語や語尾を選ぶことで、1センチでも相談者様の心に近づくことを目指しています。「この人は私の話を聴いてくれるんだ」という安心感をもって頂くために。

 

 

 

 

ステップ③ マネジメント状況を知る

すきとほる😻:

【さて、ごっそり研究の中身に入る前にマネジメント周りを聞いておくか。ここで研究が必要な理由や、タイムライン・予算が分かるけど、それも研究内容を規定するからな】

「なるほどですね。もしよければ研究内容に入る前に、どうしてこの研究が必要になったかを教えてくれませんか?」

 

 

相談者😸:

「はい、糖尿病領域のオピニオンリーダーの先生と話している中で、治療薬Aを使っている患者さんで骨折がよく起こっているという話になりまして。そこで調べてみようということになりました」

 

 

すきとほる😻:

【なるほど、規制当局要件ではないのか。であれば最悪研究に実現可能性がなかったとしても、研究をキャンセルできる余地はあるな】

「ふむふむ。いつまでに論文を出す必要があるかとか、使える予算はいかがですかね?」

 

 

相談者😸:

「論文は来年12月までには出したいです、予算はXXX万円用意しています」

 

 

すきとほる😻:

【タイムラインと予算考えると、データベース研究なら使えるデータソースはXとYだな。リサーチクエスチョン考えるとZがベストかもだか、データの利用申請の時間考えるとちとタイムライン的にきついか。とりあえずこれで外郭の把握はできたから、じゃあ研究の中身に移るか。まずは実現可能性の判断が最優先、いくつかの角度で聞いていくぞ】

「分かりました、そしたら研究の中身についていくつか質問させてください!ご関心のある研究テーマがデータベース研究というメソッドで対応できるのかを一緒にアセスメントしていきたいと思います!」

 

 

《ポイント》

当然ながら研究は使える予算、許されたタイムライン、そしてその研究が必要になったきっかけによってデザインに制約が生まれます。無限の予算と時間があるならば「じゃあランダム化比較試験やりましょう」ってことになりますから。

疫学専門家は科学的な判断だけでなく、予算・タイムラインの制約を踏まえた上で「その研究に実現可能性があるか」、「どのくらいの時間や予算がかかるか」ということも提案せねばなりません。これらのマネジメント要因は研究全体を規定する外郭となりますので、初期にアセスメントしておく必要があります。

  

  

   

  

ステップ④ 集団の代表可能性

(えー、こっから脳内の独り言がめっちゃ長くなります…)

 

説明しよう!「集団の代表可能性」とは、実際に対象にしたい患者集団(Target population)を踏まえた際に、その研究で対象にできる患者集団(Study population)がどのくらいTarget populationを代表できるのかという概念だぞ!低すぎると「対象にしたい集団が対象にできない」ということで、研究の実現可能性が低くなるぞ!

 

 

すきとほる😻:

【さて、まずは集団の代表可能性だな。

えっと、糖尿病患者を対象にするんだから、年齢的には比較的高齢者だよな?ということは高齢者が入ってない保険者データベースAは使えないな。なら残された選択肢は急性期病院からデータ集めてる医療機関データベースBか、それか色んな病院からデータ集めてる電子カルテデータベースのCか。Cはサンプルサイズ的に厳しいから、消去法でBだよな。

でも、急性期病院を定期受診する糖尿病って何よ?ふつうはクリニックとか中小規模病院レベルで診るんだから、急性期病院で診てるってゴリゴリ合併症発症してる重症の糖尿病じゃないの?その人たちって今回ターゲットにしてる治療薬Aのメインの対象なんか?】

「まず、治療薬Aを使う患者さんの特徴について教えて頂きたいのですが、どんな糖尿病の患者さんが主に使うんでしょうか?」

 

 

相談者😸:

「はい、糖尿病治療を開始したばかりのコントロール良好の患者さんから重症患者さんまで広く使われます」

 

 

すきとほる😻:

「わかりました!今回、糖尿病のメインの集団である高齢者を含めるとなると、それが手に入るのがデータベースBかCしかないんです。Cはサンプルサイズ的に厳しいので、Bしか手札がないのですが、これが急性期病院から集めたやつで、となると糖尿病治療薬Aの使用者とはかなりズレてきちゃうんですよね」

 

 

相談者😸:

「そうなんですか…」

 

 

 

すきとほる😻:

【そうだな…悲しいよな…でもやりようはあるかもしれないから、もう少し一緒に考えてもらえるように励まそう!】

「そうなんです。でも、だからといって100%研究ができないというわけではないので、もう少し一緒に考えさせてください!」

 

 

相談者😸:

「よかった!」

 

 

すきとほる😻:

【さて、そもそもレセプトデータで糖尿病の患者は拾えるんか?たぶん病名だけだとかなり怪しいよな、特異度はともかく感度はめちゃ低いだろうな。まぁでも今回は治療薬を使ってる患者を包含することになるから、いけるだろ。糖尿病じゃないのに糖尿病治療薬使いたいから偽の糖尿病病名を振ってる適応外処方がかなりあるとアウトだけど、糖尿病で適応外処方とかそんな問題にならんやろ】

「ちなみに、治療薬Aって糖尿病以外にも使われたりしますかね?これがあると真の糖尿病の患者さんだけを抽出できなくなっちゃうので」

 

 

相談者😸:

「いえ、ほぼないと思います」

 

 

すきとほる😻:

【さんきゅぅぅぅぅーーーー(マジでいつもこれくらい脳内歓喜してます笑)!!!でもこれも一応専門医にコンサル、っと。

電子カルテデータベースのCを使えば、病名+処方に加えて血糖値の検査血ベースで糖尿病特定できるよな。これ比較研究だから特異度優先すべきだし、検査値も使ったほうが良いか?でも適応外処方がほとんどないなら病名+処方で特異度は十分確保できる気がするし、わざわざサンプルサイズを激減させてまで検査値を使う必要はないかな。

あー、てか医療機関DBだと施設間のデータ結合できないけど、糖尿病ってだいたいかかりつけ医の受診で、セカンドオピニオン求めて他院受診するとかないよな?あると医療機関DBだと患者拾いにくいけど(例えば、処方は病院A、セカンドオピニオンは病院Bという時、病院Bで拾われた糖尿病患者は治療薬を使用していないように扱われてしまう)。】

「それは嬉しいです!では次は、比較する薬剤について質問させてください!」

 

 

《ポイント》

医療データベース研究の大原則は「データは現実より奇なり」です。

複雑怪奇な実臨床という現象を、極めて単純なゼロイチの病名データに落とし込み、糖尿病という診断がつくわけです。なので、データを扱う際にはその逆のプロセス、つまりゼロイチのデータから複雑な実臨床を想像し、その複雑性を研究デザインに表現してやらなければなりません。

ですから、データベースで「病名+処方」で糖尿病を定義した際に、それで拾える患者がどんな糖尿病患者なのか、そしてそれで落ちる患者がどんな糖尿病患者なのかということをどこまでもリアルに想像しなければならないわけです。

 

 

 

 

ステップ⑤ 比較可能性

説明しよう!「比較可能性」とは、2つの薬剤間でアウトカムのリスクを比べる際に、そもそもフェアな比較ができるのかという概念だぞ!例えば、薬剤Aはステージ1のがん患者、薬剤Bはステージ4のがん患者にしか使わない時、”投与1年以内の死亡率”を比較したって、そりゃフェアな比較はできないよな!

 

 

すきとほる😻:

【まずはデータベース調査における比較の難しさを知ってもらって、比較研究ができない時もあるってことを理解してもらっておかないと。期待値コントロールしておかないと、後々辛い思いをさせるからな。】

「肝心の比較研究なんですが、実はデータベース研究で比較研究が成立することって本当に稀なんです。なので、まずは入念に比較可能性を調査して、その後にようやく比較研究を行えるってことになるんです。急いでるのにすっごく焦ったい思いをさせてしまうかもしれません、ごめんなさい…」

 

 

相談者😸:

「そうなんですね…なんとかなりませんかね?」

 

 

すきとほる😻:

【そうだよな、ここの”どれくらい無理か”感はなかなか専門知識がないと受け入れ難いよな。でも、ここでしっかり共通理解を作っておかないと、後で絶対にコンフリクトが生まれるからしっかり伝えるぞ。】

「焦ったいですよね…でもフェアな比較という状況を作り出すのが本当に難しくって。もしそもそも比較可能性がないのに比較研究をやってしまって、それで治療薬Aの骨折リスクが他剤に比べてすごく高いっていう間違った結果が出たとするじゃないですか?それってすごく危なくって、例えばこの研究のせいで全世界的に治療薬Aの売り上げが下がるかもしれません。何より、治療薬Aを使うことで救われた患者にも薬が届かなくなるかもしれません。患者さんの身を守るためにも、何より相談者様の身を守るためにも、ここは慎重に検討していきたいんです。全力でやらせて頂くので、焦ったいと思うのですがぜひご助力頂けますと嬉しいのです!」

 

 

相談者😸:

「なるほど、それは確かに怖いですね…分かりました!」

 

 

すきとほる😻:

【分かってくれてありがとう、ごめんね😭

じゃあ比較の中身について聞いていこう。そもそも治療薬Aと同じような使われ方をしている薬があるかだよな。ここでも議論が発散しないように、道筋をつけて質問させてもらおう】

「では、比較可能性について一緒に考えさせてください!治療薬Aと比べられるような薬ってありますかね?理想的には”目の前に糖尿病の患者さんがいる時、治療薬Aと比較対象となる薬が、まぁどっちも同じような薬だからどっちでもいいけど、とりあえずAにしとくか”みたいな感じで処方される薬があるとベストです」

 

 

相談者😸:

「それならたぶん、治療薬Bだと思います」

 

 

すきとほる😻:

【お、よかったファーストステップはクリアだ!次は、今回気にしている骨折のリスクが、治療薬Aに固有のリスクなのか、それとも同クラスの薬剤も含んでクラスエフェクトとして懸念されてるのかだよな】

「ちなみに、骨折って治療薬A固有のリスクですか?それとも治療薬Aのクラス全体のリスクですかね?それによって比較対象が変わったりするんです(クラスエフェクトだとすると、同クラスの薬剤を比較対象にしてしまうと骨折リスクがマスクされる恐れがあるので)」

 

 

相談者😸:

「えっと、そこまではっきりしたことは分かってません…」

 

 

すきとほる😻:

【まぁそうだよな、ならどちらにも対応できる提案をしておこう】

「ですよね、なんかめんどくさいこと聞いちゃってすいません笑。ここは比較対象の設定方法次第では治療薬A固有のリスク、そしてクラスのリスクのどちらも見れる可能性はあるので、今後一緒に考えさせてください!」

 

 

相談者😸:

「はい!」

 

 

すきとほる😻:

【あとは、比較可能性を確認するまでにどんなプロセスがあるかをしっかりと理解して頂いておこう。先が見えないまま”結局、比較できんの?”って待ち続けるのは地獄だもんな】

「比較可能性なんですが、この後はこんなプロセスで確認していくことになると思います。まず臨床知ベースの情報として、専門医に実際の治療薬Aと、その比較対象の候補の使われ方を確認します。そんで、次はデータベースの情報として、実際に使用できる医療データベースを使って、それぞれの薬の使われ方や、その薬を使う患者の特性なんかを確かめたりします。でも、ここまでやってもまだ中間地点なんです。最終的には傾向スコアっていうような、両群の患者特性がフェアに揃っているかということを確かめられるような指標があるので、それを使って比較可能性を最終判断することになるんです。」

 

 

相談者😸:

「大変なんですね…」

 

 

すきとほる😻:

【だよね、私も辛い笑。でも、ただ「できません」って言うだけじゃ失望させるだけだし、相談者様も自分の部門に戻った時に申し訳がつかないよな。もう予算とっちゃってるかもだし。だからしっかり代案も提案して、今後も相談してもらえる信頼関係をつくろう】

「そうなんです、私も辛いです笑。できる限り責任を持ってサポートさせて頂くので、一緒に頑張ってもらえると嬉しいです!ただ、ここまでやってもやっぱり”比較はできません”っていうことも全然あるんです。その場合なんですけど、たとえば比較はせずに、治療薬Aを使った糖尿病患者さんにおいてどれくらい骨折が発生しているかっていうことを記述することはできます。なので、このテーマで新規性を主張できるなら、こっちに研究を逃してやることはできるかもしれません」

 

 

相談者😸:

「それはありがたいです、臨床の先生もこの研究を楽しみにしているので、やっぱり止めますとは言えなくって笑」

 

 

すきとほる😻:

【さて、あとは交絡因子が今回使うデータベースで入手できるかだよな。主要な交絡因子が何かは専門医にコンサルだから、ここでは聞かないでいいや。んで、どうせ未測定交絡に対するツッコミは論文おレビュワーから来るだろうから、んー、設定できるならNegative control使ってお手当しておこうかな、まぁ後で考えよう】

Negative controlの解説はこちら↓

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《ポイント》

データベース研究の初心者の方は「データベースってデータあるし、簡単にできるんじゃない?」という結構気軽なモチベーションでご相談くださる方が少なくありません。そんな時、データベース研究の難しさを伝え、「これはできません」ということを理解してもらうのも疫学専門家の務めです。

しかし、ただぶっきらぼうに「できません」と言うなんで言語道断。

何度もプロジェクトで協働し、ラポールを形成できているならOKですが、その前にこれを言ってしまうと「こいつに相談しても良いことないわ、もう部門で承認されたし、とりあえず研究しよ」と最悪の自体が起こりうることも。

なので、「なぜできないのか」ということを誠意を尽くして丁寧に説明し、そして可能な限り代案を提案しましょう。たとえ疫学の難しい専門知識は伝えられなかったとしても、「この人は親身になってくれている」という誠意を伝えるのです。 

あと、Negative controlのくだりでちょっと書いてますが、未測定の交絡を含めてデータベース研究はリミテーションの嵐です。でも、だからといって「お手上げです」ではなく、そのリミテーションに対して「何らかの手法を使うことでお手当できる範囲のリミテーションかどうか」をアセスメントします。つまり、ここで切れるカードを何枚持っているかどうかで研究の実現可能性へのアセスメント結果が大きく変わるわけです。データベース研究の相談を頂いた時には、こうして相談初期の頃からすでに「あー、ここ投稿時にレビュワーに突っ込まれるな。なら〜で対処して、リミテーションにはああ書くか」みたいに頭で考え始めています(というか、これを事前に考えられていないと、あとあと詰みます)。

 

 

 

 

ステップ⑥ 薬剤曝露の誤測定のリスク

すきとほる😻:

【あー、てか糖尿病の治療薬ってめっちゃ治療方針変更になるのでは?まずはNew userがとれるか、Prevalent useになるかだよな】

「全然知識がないので教えて頂きたいのですが、治療薬Aって新規発症の糖尿病に使われますか?それとも他剤でコントロール不良だった時にはじめて使われる感じですかね?」

説明しよう!「New user」とは、新規で糖尿病を発症し、始めて糖尿病治療薬を処方された患者だ!それに対し「Prevalent user」とは、糖尿病治療薬をすでに使用済みの既存治療者を指すぞ!薬剤疫学で比較研究をする時のゴールドスタンダードはNew userを使うことで、なぜならPrevalent useだと色々と不都合が生じるからなんでだ!詳しくは↓の記事を見てくれよな!

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相談者😸:

「初回治療でも使われますし、コントロール不良時の移行先としても使われます」

 

 

すきとほる😻:

【OK、ならNew user designが使えるかな。でもPrevalent userが殆どだとNew userで比較研究やっても結果の一般化可能性が限られちゃうから、どのくらいがNew userなのかも記述データで事前に確認しておこう。ここはレビュワーに突っ込まれるかもしれない。もし治療薬Aが移行先としてしか使われないならPrevalent-new user designも考えたけど、今回は不要、と。

さて、次は曝露の誤測定のリスクだよな。レセプトデータは処方の有無しか分からず、内服の有無は不明。だから、処方=内服と仮定して曝露を定義するしかないけど、もし内服漏れが沢山出るタイプの薬なら曝露の誤測定が大きくなってバイアスが入る可能性がある。セオリー通りなら”有意差なし”、つまりBias toward the nullがかかるから、有害事象っていうアウトカムを見るなら望ましくないな(有害事象のリスクがマスクされる、つまりconservativeではない方向にバイアスがかかるので)。】

「レセプトデータって処方の有無だけわかって、内服の有無はわからないんです。なので、処方されたけど内服はしないみたいな状況が多いと、現実とデータのズレが大きくなっちゃって、結果が歪んじゃうんです」

 

 

相談者😸:

「なるほどですね、ちょっと先生に聞かないとわからないんですが、内服薬だし、人によってはあんまり真面目に内服しない人もいると思います」

 

 

すきとほる😻:

【なるほど。比較研究だから、なら内服漏れによる曝露の誤測定が系統的じゃなくって非系統的な誤測定であることを祈るのみだな。ここは治療薬Aと比較対象で内服漏れの度合いがどれくらい違うかは専門医にコンサルしておこう。ここはリミテーションに書く必要があるだろうけど、せめて非系統的な誤測定であると言えると良いな。

あとは処方開始後のSwitchingやAdd-onがどれくらいあるかだよな。これが頻繁に起こってると同じように曝露の誤測定が大きくなる。】

ここでごにょごにょ考えてる非系統的誤測定とか系統的誤測定はこの記事で解説してるぞ!

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「治療薬Aが処方された後も、処方の変更、例えば他の薬に切り替えたりとか、別の薬追加したりと買ってあるんですかね?それもやっぱり薬への曝露を正しく捉えられない原因になって、結果を歪めちゃったりするんです」

  

  

相談者😸:

「それも先生に聞かないとわからないんですが、糖尿病なので治療薬はずっと固定ではないと思います」

  

  

すきとほる😻:

【だよなー、あー、まじで曝露の定義ってめんどいよな…薬剤疫学ほんとめんどくさい…なんでこんなことやってんだろ笑。Add-onとSwitchingが頻繁に起こるとなると、初回処方で治療薬Aへの曝露を定義して、そんでAdd-onかSwitchingが起きたらそこで追跡打ち切りにするしかないかなぁ。まぁこれは後でゆっくり考えよう。】

「わかりました!薬剤疫学って、どうやって興味のある治療薬への曝露を定義するかが結構難しいのですが、ここは先生にも相談しながら今後一緒に考えていきましょう!」

  

  

《ポイント》

薬剤疫学における最大の鬼門は曝露の定義の難しさだと私は思っています。コロコロ曝露の内容が変わるからですね。曝露の定義がいかに難しいかは、この記事をご覧いただければお分かりいただけるかと思います。

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ステップ⑦ アウトカムの誤測定のリスク

データベース研究においてアウトカムの誤測定(記録されてる病気に本当は罹っていなかったり、記録されていない病気に本当は罹っていたり)は最も恐ろしい問題の一つだぞ!そもそも、レセプトデータに記録されてる病気は基本は信用しちゃいけない!下の記事を読んでくれよな!

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すきとほる😻:

【さて、アウトカムか…骨折かー、これいけるんかな?確か日本だと骨折のバリデーション研究はやられてなかったはずだよな(ここら辺の引き出しも疫学専門家の大切なスキルです)。つーことは海外のバリデーション研究をまず調べて、そんであとは日本のガイドラインで骨折の診断方法を参考にして、んで最後に専門医にコンサルだな。

てか骨折って誤診断どれくらいあるのよ?まぁ見逃しは普通にあるかもなー、でも今回は急性期病院だけしかターゲットにしてないんだから骨折見逃したりしないか。比較研究だから特異度が大切になるな(リスク比を計算する場合、感度は影響しないが特異度が下がるとリスク比が1.0に近づく方向へバイアスがかかるぞ、有害事象をアウトカムにする時は特に注意だ!下に参考になるリンクを貼っといたぞ)。

骨折だろ?特異度大丈夫だよな?だって適応外の処置なんてないだろうし、わざわざ骨折じゃないのに骨折病名つけて、骨折用の治療を提供するなんてないよな?でもここは専門医にコンサルだなー。

骨折の病名定義作るなら、病名、そしてCTかX線の検査かな?処置は、んー、そこまではいらないかなぁ?先行研究みなきゃわからん。でも骨折ならたぶんシンプルな定義でそれなりの妥当性のやつ作れるよな、あー助かるー、マジで嬉しいー、さんきゅー!

てか、今回対象にしたいのってどの骨折よ?特定の部位があるんかな?それとも大腿骨とかメジャーな骨折全部?それとも小さい骨折も含めて全部見たいのかな?機序は?病的骨折だけを対象にしたいのか、それとも交通事故や転倒とか外的要因による骨折も対象にしたいのかな?】

「次はアウトカムについて聞かせてください!骨折でしたよね?これってどこか特定部位の骨折ですか?それともメジャーな骨折全部とか、はたまたもう骨折なら全部見たい?どれですかね?」

  

  

相談者😸:

「んー、特にこれっていうのがないんですよね…」

  

  

すきとほる😻:

【まぁそりゃそうだよな、そこまで分かってたら苦労しないわ。だったら、検証的な解析としてアウトカムに幅を持たせて幾つか設定した方が良いな。論文のバリューも上がるだろうし、論文のレビュワーの印象も良いだろ】

「わかりました、ではこんなのはいかがですか?まず特にインパクトが大きいメジャーな骨折だけでアウトカムを設定して、そんで追加解析で全ての骨折を対象にする。場合によっては病的骨折だけに絞っても良いと思いますが、たぶんわざわざ病的骨折のコードを医師は入力しないので、これは難しい気がします。こうして色々な角度から骨折を検討することで考察の幅が広がり、論文のバリューも上がるかと思いますので」

  

  

相談者😸:

「おお、良いですね、わかりました!」

 

  

すきとほる😻:

【あとは、アウトカム定義を作る難しさは伝えておいた方が良いだろうな。妥当性が保証できないならデータベース研究はできないから、後でがっかりさせないために期待値コントロールはしておかないと。】

「ちなみになんですが、データベース研究ってアウトカムの定義がものすごく大切で、妥当性が低い定義を使うと結果がものすごく歪んじゃうことがあるんです。たとえば、本当は骨折のリスクがないのに、歪んだ結果では骨折のリスクが2倍になるって出てきちゃったり。それって会社にとっても患者さんにとってもすごく不幸なことじゃないですか?だから、もしアウトカム定義の妥当性が保証できないってなった場合にはデータベース研究そのものを実施できないということもあるので、その可能性は念頭に置いておいて頂くとありがたいです」

  

  

相談者😸:

「データベース研究って難しいんですね…データがあるから誰でもできるって思ってました笑」

 

  

すきとほる😻:

「わかります、私も最初はおんなじこと思ってました笑。でもそこから何回も痛い目を見て、ようやくまともな研究ができるようになってきまして。同じ経験をして欲しくないので、アウトカム定義を含めて研究の実現可能性については入念にチェックしていきましょう!」

  

    

《ポイント》

データベース研究の実現可能性がないと判断される最大の理由の一つが「アウトカム定義の妥当性が保証できない」ということです。臨床経験がない方だとここらへんの感覚を掴むのが難しいので、特に入念に説明する必要があります。「研究を中断する」というのは企業にとっては大きな決断なので(特に既に予算の承認を得てしまっている時などは)、「なぜこの研究が実現できないか」ということで腹落ちしておいてもらわないと、絶対に後でコンフリクトの原因になります。言葉を尽くして説明しましょう。

  

  

  

  

ステップ⑧ 患者の追跡可能性

説明しよう!追跡可能性とは患者を薬剤への曝露からアウトカムの発症まで、見失うことなくしっかり追跡できるかどうかという概念である。途中で脱落が起こると選択バイアスというバイアスが起こる恐れがあり、結果が歪んでしまうかもしれないぞ。

すきとほる😻:

【さて、あとは追跡可能性だな。まず第一に考えるべきは治療薬の初回曝露から骨折の発生までをしっかりと追跡できるだけの追跡期間があるかどうか。骨折の発生まで1年かかるのに、追跡期間が6ヶ月しかないとかだと何も見られないからな。んー、骨折発生まではさすがに6ヶ月ってことはないよな?最低でも1年が必要だとして、今回使うデータベースの平均の追跡期間が確か1.8年くらいだから(ここら辺も引き出しとして持っておかねばならない知識です)、ちょっときついかもな…】

「先行研究やラボデータで、治療薬Aの内服から骨折の発生までどれくらい期間がかかるかって分かってますかね?大体で良いので。」

  

  

相談者😸:

「だいたい1年から2年と聞いています」

  

  

すきとほる😻:

【あー、これは風向きが怪しくなってきたぞ…となると別のデータベースを使うことも代案として考えておいた方が良いな。いけそうなのはデータベースCかDだけど、それぞれ〜なリミテーションがあるしなぁ。ちと持ち帰って検討するか。その前に、それぞれのデータを使うだけの予算的な余力があるかは押さえておこう。】

「なるほど、となると今回使う予定だったデータベースはミスマッチかもしれません、平均の追跡期間が1.8年しかないんです。別のデータベースという選択肢もあるんですが、その場合結構予算がかかってしまう可能性がありまして、今って予算の余力はどれくらいありますか?」

  

  

相談者😸:

「XXX万円です」

  

  

すきとほる😻:

【あー、だめだな足りない…となると予定通りのデータベースでいくしかないか…まぁとりあえず骨折を追うのに必要な追跡期間については専門医にコンサルして、あとは実際に手元のデータで発生までの期間を測ってみるか】

「わかりました!とすると新しいデータベースは使えないので、最初にご提案したものしかないですね。ちょっと追跡期間が十分がどうか怪しいのですが、ここはこれから確かめていきましょう」

  

  

相談者😸:

「はい!」

  

  

すきとほる😻:

【さて、あとは他施設受診だな。今回使う予定の医療機関データベースは同一医療機関内でしか患者データをリンクできないから、他施設に行った場合は別の患者として扱われちゃう。だから、糖尿病の治療と骨折の治療を同じ医療機関で受けてないと、曝露かアウトカムの誤測定が起こっちゃう。ん、てか糖尿病と骨折を同じ医療機関で受けるっていう状況、めっちゃ限られてないか?だってこれ糖尿病の比較的高齢な患者が対象集団なんだから、骨折起こしてわざわざ歩きにくいなか急性期病院なんてこなくね?ふつうは近医の整形受診するよな?とすると、急性期病院で治療が必要なよっぽど重症な骨折以外はめっちゃ取り漏れる可能性あるな…これ無理じゃね?

んー、いちおう専門医にコンサルはするけど、いやー多分むりだろうなー。とするともうさっき撤退した新しいデータベースしか手がないな。】

「実は一つ研究の実現可能性という点から懸念がありまして、今回、糖尿病治療と骨折治療を同じ施設で受けていないと患者のデータが結合できないんですが、たぶん骨折の特性を考えるとその状況ってかなり珍しくなっちゃうと思うんです。となると、骨折をして別の病院を受診してるけど、データ上は骨折していないということになってしまって。なので、やはり先ほどお伝えした新しいデータベースででしかこの研究は行えない可能性が高いです。」

 

  

相談者😸:

「そっ、そうなんですか…」

  

  

すきとほる😻:

【ごめんね悲しいこと言って…でも言った以上は責任取るように頑張るよ、追加予算とるの心細いと思うけど、ワイもしっかり援護するからな】

「はい、なので新たなデータベースを使用するための追加予算が必要になる可能性があります。私が判断したことなので、もし相談者様の部門内の検討において私の意見が必要でしたら喜んで会議に参加させて頂きます、いつでも呼んでください!」

 

  

相談者😸:

「ありがとうございます!」

  

  

《ポイント》

さて、今回の会話では追加予算の必要性について言及しています。最初にお伝えしたように予算やタイムラインは研究全体を規定する外郭なので、極めて重要です。その外郭に対して「予算足りんからテコ入れしてくれ」とお願いしているわけですから、まぁめっちゃセンシティブな話をしてるわけです。

なので「予算追加の必要性の発案者は私なので、責任もちます」と言い切っているわけです。ここは人によって考え方が分かれるかもしれませんね。「ただ相談受けてるだけなんだし、それに他部門の予算なんだから下手に責任もつとか言うと後で辛いんじゃない?」というのも正しいご意見だと思っています。

美学と言うとちょっと仰々しいのですが、私は「責任を伴わない発言に力はない」と思っており、なので自分が責任をとるような場面でなくとも、疫学関連の発言をする際には私は「この発言の責任は私にある」という思いを胸に発言するようにしてきました。責任を取ることが専門家の責務の一つであると考えています。

それに、そういう覚悟ってやっぱり周りに伝わると思うんですよね。相談者様からしても「この人は一緒に泥を呑んでくれる人だ」って思ってもらえればやっぱり関係性はより深くなりますし、それによって研究の質はさらに向上すると考えます。疫学専門家の責務は、疫学研究の質を1センチでも向上させることですから、そのために必要なことは全てやってやるぞ、と意気込んで仕事をしています。

  

  

  

ステップ⑨ クロージング

すきとほる😻:

いきなり小難しいことばっかり言ってしまってすまんな…でも聞いてくれてありがとう。そろそろ会議時間も終わりだから締めるけど、大切なのは”また次も相談に来てもらうこと”。ここで関係性が切れたら研究の質が保証できなくなるもんな。】

「なんだか変なことばっか聞いちゃってすいません笑、でも色々教えてくださってありがとうございました!」

 

  

相談者😸:

「とんでもない、こちらこそです!」

 

 

すきとほる😻:

【次に会社で会った時には挨拶して、ちゃんと顔を合わせて人間関係を作ろう】

「そういえば〜さんは会社にはいつも何曜日にいらっしゃるんですか?もしよければせっかくなので会社で直接ご挨拶させて頂ければ嬉しいなーと思って!〜の話もしたいですし笑(最初の雑談で交わした趣味の話なんかをここでちょっと入れます)」

 

  

相談者😸:

「いいですね、ぜひぜひ!だいたい毎日いますよ!」

 

 

すきとほる😻:

「ありがとうございます、私が会社に行く時には連絡させてください!それと、もし今回の研究のこととか、それ以外のことでも何か私にできることがありましたらいつでも気軽にチャット頂けますと嬉しいです!今日はお時間ありがとうございました、とても楽しかったです!」

 

 

 

  

終わりに

だいぶ長い会話劇になってしまいましたが、ご覧くださりありがとうございました。

”研究者”と聞くと、メディアではコミュニケーションが苦手なマッドサイエンティストなんかのイメージが先行していますが、私はコミュニケーション力を専門性と並んで研究者に必要なCapabilityの片割れであると考えています。

 

特に企業のように異業種の方々が集まり、さまざまな価値観が混在する中で科学的妥当性を追求するのであれば、強力なコミュニケーションスキル(というと安っぽいので、ラポールの形成スキルかな)が必要だと思っています。

 

 

 

 

終わりにその2

私は外資系企業と国立大学の疫学専門家として活動しておりますが、それ以前はブラック企業に勤める社畜として上司に怒鳴られる日々を送っていました。

    

「強く生きるには専門性だ」

    

そう一念発起し、大学院の修士課程に通い、そこから2年間で疫学専門家としてのキャリアにルートインし、2年で年収を1,400万アップさせることができました。

    

こちらのnoteでは、疫学の世界で活躍したいと考える方々に向けて、「専門性ゼロの段階からどうやって企業の疫学専門家のポジションをゲットするか」ということを解説します。

私自身が未経験から2年間で外資系企業の疫学専門家になるまでに積み重ねた経験、ノウハウの全てをお伝えするつもりで書き綴っています。

    

「これを読めば、企業の疫学専門家になるために必要な知識は全て揃う」

    

その気合いで、私のノウハウを全てお伝えします。

    

    

       

       

       

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